センバツ2023 3回戦 広陵 13年ぶり8強入り 海星に逆転 3-2 /広島
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第8日の27日、広陵は3回戦で海星(長崎)と対戦、3―2で逆転勝ちし8強入りした。序盤に2点差とされたが、中盤以降着実に加点し七回に勝ち越した。初戦に続き先発した高尾響(2年)は10奪三振で完投した。広陵の8強入りは準決勝に進出した2010年以来、13年ぶり。準々決勝は第10日第2試合(29日午前11時)で専大松戸(千葉)と戦う。【安徳祐、加藤昌平】 試合前に「1点勝負を覚悟する」と中井哲之監督が予見した通りの展開となった。 2点を追う五回1死、7番・中尾湊(みなと)(3年)は甘めの直球を逃さずフルスイング。「こすったかな」と不安だったが右中間三塁打となり「最高でした」と満面の笑みで振り返った。「サウスポー」が流れ、三塁側アルプス席のボルテージが最高潮に達する中、続く高尾の右犠飛で中尾が生還、広島カープの応援でおなじみの「宮島さん」の合唱が球場に響いた。 六回の先頭打者は1番・田上夏衣(3年)。五回にホームからベンチに戻った中尾に「ナイスバッティング」と声をかけていた田上は、刺激を受けていた。振り抜いた打球は右中間を破り、50メートル6秒0の俊足で三塁まで到達。父純希さん(48)は「打った瞬間に抜けると思った。うれしくて叫んでしまった」と目を細めた。続く2番・谷本颯太(3年)はきっちり外野に飛ばし中犠飛。田上が同点のホームを踏んだ。谷本の父和隆さん(49)は「同点に追いついてよかった。粘って逆転してほしい」と願いエールを送った。 和隆さんの願いは通じ、七回1死一、二塁で、田上が強打したゴロを二塁手が後逸する間に、二塁走者の高尾が一気に生還し、勝ち越した。この日3度目の「宮島さん」が響いた。 前半では投球に「力が入りすぎて」制球が乱れていた高尾も持ち直し「打たせて取る」作戦に変更。スライダーやカーブも織り交ぜ、完投した。 國貞和彦校長は「最初は心配だったが、諦めずに頑張ってくれた。次も全員野球で戦ってほしい」と話した。甲子園に校歌が鳴り響いた。 ◇「21番」思い託す ○…アルプス席の応援団が着る真っ白なシャツの背中には「ありがとう21」の文字。「21」には「日(2)本一(1)を目指す」という目標のほか、ベンチ外の選手たちは「21番目の大事な選手」という中井監督の思いが込められている。 「100%KORYO」とデザインされた大太鼓をたたく山本英春(えいす)選手(3年)は「スタンドにいるみんなは試合に出られないが、応援は全力を尽くしたい」と「21」の思いをフィールドの仲間に託した。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇出塁、着実に確実に 田上夏衣(かい)選手(3年) リードオフマンが仕事をした。「チームを勢いづける役割」と自覚し、今大会は2試合とも初打席で出塁。この日は六回にも右中間三塁打を放ち、同点のホームを踏んだ。 道のりは楽ではなかった。昨秋の中国地区大会では4試合中、初打席で出塁したのはわずか1試合のみ。先輩たちが引退し「自分が打たなくては」と悩み、重圧に押しつぶされていた。 冬を越え「ファーストストライクから振る」と意識改革。一回には左前打を放った。 1点を追う六回の三塁打は左投手の内角のスライダーを引きつけてスイング。打った瞬間「(三塁に)いけるな」と確信、俊足を飛ばした。 「成長した姿を見せられてよかった。嫌がられる打者になりたい」。堂々とした存在感で、文字通りチームを引っ張っていく。