『続・激突!カージャック』はスピルバーグの大傑作......なのに評価が低いのは?
■何度でも観て、かみしめたいラスト
その後に何が起きるか。描かれるのは現代アメリカのさまざまな断面だ。2人を応援する人たち。2人を銃撃してヒーローになろうとする人たち。長く一緒に旅するうちに、スライド巡査と2人の間に奇妙な連帯が生まれる。そして3人を追跡する警察隊を指揮するタナー警部も、2人の動機を知って、できることなら2人を救いたいと煩悶する。でも同時に、多くの市民が銃で武装しているからこそ、これに拮抗せねばならないアメリカの治安権力の暴力性もすさまじい。ラストが予想できない。 クロービスを演じるウィリアム・アザートンの小物感と家族への思い、ルー・ジーンを演じるゴールディ・ホーンの優しさと壊れっぷりのバランスが素晴らしい。根っからのワルではないが思慮が少し足りず大きな失敗をしてしまう弱さと子供への一途な思いを抱く夫婦を、2人は見事に演じている。 そして何度でも何度でも観て、かみしめたいラスト。紛れもない傑作。もっと評価されていいはずだ。 240423P40_MCM_02MAMA355501 newsweekjp_20240417074555.jpg 『続・激突! カージャック』 『続・激突! カージャック』(1974年) 監督/スティーブン・スピルバーグ 出演/ゴールディ・ホーン、ウィリアム・アザートン、ベン・ジョンソン <本誌2024年4月23日号掲載>
森達也(映画監督、作家)