「エース頼み」「負担分散」 センバツ4強、投手起用に大きな差
第94回選抜高校野球大会は30日に準決勝、31日に決勝が行われる。大会が終盤に差し掛かると気になるのが、1人の投手につき「1週間に500球以内」と定められた球数制限だ。ベスト4に残った各チームを見ると、投手起用に大きな差が出ている。 【今大会のホームラン 大阪桐蔭が驚異の記録】 京都国際の出場辞退で補欠校から繰り上げ出場した近江(滋賀)は今大会、エース右腕の山田陽翔(はると、3年)が一人で投げ抜き、計379球を投じた。20日の1回戦は長崎日大との延長十三回タイブレークで165球を投げた。準決勝は1回戦の投球数が「リセット」されるものの、4強のチームで最も球数が多く、決勝までの2試合で投げられるのは残り286球となった。2021年夏の甲子園でも2年生ながら全5試合に先発し、計483球を投げて4強入りに貢献したが、昨秋は右肘を故障して登板がなかった。 近江の多賀章仁監督は準々決勝の後、「投手陣は山田以外にない。また、1回戦の延長タイブレークや、(昨年の)秋季近畿大会で敗れた金光大阪との戦いなど(を制した)山田は『持っている』。山田の持っているものに次の試合も乗っていきたい」と語った。チームの命運をエースに託す方針だ。 準決勝で近江と対戦する浦和学院(埼玉)もエース左腕の宮城誇南(こなん、3年)が全3試合で先発し、計305球を投げた。2回戦、準々決勝は継投したものの、「宮城中心」となっている。森大監督は「(宮城は)5人の投手陣の中で信頼できる投手。みんなが納得する『背番号1』」と話すが、準決勝以降は誰を先発させるか注目される。 一方、準決勝の第2試合で対戦する両校は、投手の負担を分散できている。国学院久我山(東京)はエース右腕の成田陸(3年)が2試合に先発して計206球を投げたが、渡辺建伸、松本慎之介の両3年生左腕も各2試合に登板し、ともに今大会100球前後を投げた。成田は「誰が投げても(野手陣と)連係して最少失点に抑え、チーム全員で勝つのが久我山スタイル」と強調する。 1回戦の最後に登場した大阪桐蔭は勝ち進んだ場合、日程が最も厳しくなるはずだった。しかし、2回戦に対戦予定だった広島商は新型コロナウイルスのPCR検査で複数の選手が陽性判定を受け、参加を辞退。大阪桐蔭は2回戦が不戦勝となり、他校より1試合少なくなった。 1回戦は3年生右腕の川原嗣貴が完投し、準々決勝は「2年生四天王」の一角の左腕・前田悠伍ら3投手が継投しており、各投手のスタミナ面の不安は小さい。前田は「自分一人では勝てない。投手全員の力を合わせて優勝に導きたい」と力を込める。 開催された過去10大会を振り返ると、1週間で500球以上を投げた投手は、第85回大会(13年)で準優勝した済美(愛媛)の安楽智大、第87回大会(15年)で優勝した敦賀気比(福井)の平沼翔太と準優勝した東海大四(北海道、現東海大札幌)の大沢志意也、第88回大会(16年)で優勝の智弁学園(奈良)の村上頌樹の4人。いずれの投手も決勝まで全試合に登板した。今大会のベスト4チームは準決勝、決勝の先発マウンドを果たして誰に託すのか。【伝田賢史】 ◇4強チームの全投手の準々決勝までの投球数 (▽は左投げ、☆は完投) 【浦和学院】 ▽宮城誇南 19日 117☆ 24日 78 28日 110 浅田康成 24日 10 金田優太 24日 13 28日 41 【近江】 山田陽翔 20日 165☆ 25日 87☆ 28日 127☆ 【国学院久我山】 成田陸 22日 126☆ 28日 80 ▽渡辺建伸 25日 76 28日 39 ▽松本慎之介 25日 83 28日 15 【大阪桐蔭】 川原嗣貴 24日 108☆ ▽前田悠伍 28日 86 別所孝亮 28日 28 南恒誠 28日 17