金融庁がインパクト投資普及に本腰、「慈善色」の払拭が鍵に
(ブルームバーグ): 社会課題の解決と収益性の両立を図るインパクト投資の普及に向けた取り組みを、金融庁が本格化させる。慈善的な色合いが濃いと捉えられがちなイメージを払拭し、収益をおろそかにしない投資としての地位を確立したい考えだ。
金融庁は2月にインパクト投資に関する指針の最終案をまとめ、3月末までに正式決定する。5月には官民の関係者による対話の場である「インパクトコンソーシアム」の第一回総会が開かれる見通しだ。
国内での動きが活発化するのは、インパクト投資の促進が岸田文雄政権の下で重要施策の一つに位置付けられたためだ。「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」には、2年連続でインパクト投資に関する記述が盛り込まれ、ESG(環境・社会・企業統治)意識の浸透とともにインパクト投資にも関心が集まり始めた。
世界全体では2022年末の投資残高が約1兆1600億ドル(約174兆円)との試算がある一方、日本での残高は21年度末で約5兆8500億円と海外との開きがあるが、金融庁の高田英樹総合政策課長は「それだけ日本の伸びしろが大きい」とみる。
インパクト投資は社会的な改善効果の実現を意図するほか、その効果の定量的な測定が求められるなど、一般的なESG投資とは異なる要素を持つ。
高田氏は、インパクト投資を本流の投資手法として育てていくためには「収益をある程度犠牲にしてもいい」というイメージを払拭することが必要と指摘する。「インパクトと収益がトレードオフの関係にあるのではなく、両立し得るものであるという認識が浸透すれば、多くのプレーヤーの参入につながるきっかけになる」と話す。
「収益性の見える化」
実際の収益性はどうか。機関投資家でもある第一生命保険は、17年からベンチャー企業へのインパクト投資を始め、累計で25件、金額にして約120億円の投資実績を積み上げてきた。
同社オルタナティブ投資部の乙部真太郎ラインマネジャーは「新規株式公開(IPO)市場が振るわないことから、現時点ではベンチャー投資全体の収益は期待されたほど出ていないが、インパクト投資のパフォーマンスは全体に劣後していない」と明かす。