風間俊介「セリフ量の問題じゃない」主演舞台で「チームワークがほころんだ瞬間に“たいへんなことになるな”と感じた」理由
セリフを「覚えられる気がしない」本作品ならではの理由
そのうえで、とんでもないセリフ量であることも今回の舞台の難所のひとつといえる。が、「それは、物量の問題じゃない」と続ける。 「“覚えられる気がしない”というのは、セリフ量の問題じゃないです。会話が成り立っていないからです。たとえば“今日はいい天気だね”、“夏も終わりだね”というセリフは前後で関連づいているので、覚えていくことができます。 また、野球の話をしていたら、食事の話で返ってくる……くらいかけ離れていたら、それはそれで覚えやすいと思います。でも今回は、一見会話が成り立っているんです。これが恐ろしくて。“成り立っているぞ?”というルートを通ると破滅が待っていると思うので、“成り立っていないぞ”と言い聞かせながら覚えていくしかないなと。17歳のときにはじめて舞台に出演して、24年くらいになるのかな? 初めての挑戦になるかなと思っています」 経験豊富な風間さんを四苦八苦させる今回の作品、より多くの人の目に触れてほしいと願わずにはいられないが、風間さん自身は「一番観てほしい方たちは、観ないと思う」と冷静に話す。 「コロナ禍や経済的な問題を経て、それが世界中で表面化しているいま、潜在的な鬱屈が溜まっている状態だと思います。そういう意味では、いまを生きる人たちに観てもらうことはとても意味のあることだと感じます。が……、これは役者は言っちゃダメだと言われるかもしれませんが、たぶん、一番観てもらいたい方たちは、劇場に来てくださらないんじゃないかと思っています」
この作品を観に劇場に足を運んでほしい方たち
その真意は、本作のタイトルでもある“モンスター”の存在にあるという。本作の“モンスター”を風間さんは、「自分たちの日常に潜む、表裏一体の怖さで、誰の中にも潜んでいるもの」と表するが、「こういう話に興味を持って劇場にいらしてくださる方は、そこに気づく方たち」ではないかと推察する。 「気づく方というのは、鬱屈としたものが溜まっていることに対しての恐怖心などに、アンテナを張っていらっしゃる方で。そういう方は来てくださると思いますが、そういったことに気づいていない方たちは危ういところにいるのではないかな、と。だから、一番観てもらいたい方たちは、観に来ないと思うんです」 「その構図もまた、おもしろいなと思ってしまうんですけどね」と笑う風間さんが、舞台でどんな“モンスター”を表面化するのか、楽しみでならない。 かざま・しゅんすけ 1983年6月17日生まれ、東京都出身。1997年に芸能活動を開始。1999年、ドラマ『3年B組金八先生 第5シリーズ』(TBS系)で演じた兼末健次郎役で話題をさらい、第3回日刊スポーツ・ドラマグランプリ最優秀新人賞を受賞。2011年には『それでも、生きてゆく』(フジテレビ系)で第66回日本放送映画藝術大賞優秀助演男優賞、第70回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演男優賞を受賞し、以降、俳優として唯一無二の地位を築く。昨年12月独立し、現在はフリーランスとして活動。2024年5月1日、ニホンモニターが発表した「役者のドラマ出演数ランキング」(対象期間:令和元年~令和5年)で出演本数200本を記録、6位にランクインした。 有山千春
有山千春