内野聖陽インタビュー!緻密な役作りで松尾芭蕉の人生を生きる
孤独を選んだ謎を探る
――こうした役と向き合い、演じる役者というものは、“孤独”な仕事だと内野は語る。孤独に生きようとした人物が描かれた作品と対峙している今、松尾芭蕉が感じていた孤独をどういうものだと感じ取っているのだろうか。 内野 松尾芭蕉の孤独、どうしてそれほどまでに一人を求めたのかが最も大きな謎であると同時に、一番大事なところでもあるんですよね。これから稽古をする僕自身にとっても、その答えを探しに出る旅でもあります。ものを表現する人間として、孤独な時間がどれほど大事なのかは、役者にも重なる部分があると思っています。実際にひらめきや気づきの瞬間というのは、深夜の静寂の中で台本と格闘している時とかが多いし、昼間の喧噪の中ではどうしてもひらめきは浅いんです。何かと交信するためには孤独であることがとても大事で、静寂と孤独の重要性という考えは芭蕉さんにもあったのではないでしょうか? そんな風に、少しでも自分に重なる部分がないものか、あれこれと考えています。 ――かなりの時間をかけて松尾芭蕉という人物を自分の中に構築していく作業には、特別なものを感じる。彼は舞台作品と向き合うことで、何を感じているのだろうか? 内野 役者として何かとセッションする楽しさを一番肌で感じ取れるのは、生の現場である舞台なんです。相手役だったり、演出家だったり、台本であったり、お客様だったり。お客様とは台詞を交わすわけではないので一方向的なことだと思われるかもしれませんが、観客の吐息や笑い声や集中した空気感と共に役者は常にセッションしているんです。特に、昨年出演した『笑の大学』のような喜劇的な現場ではそれをとても実感しましたね。稽古場で完成度高く創りあげていきますが、画竜点睛はお客さんと一緒。僕たちが演じていることをお客様が見て感じて、初めて完成するのが舞台です。僕にとってセッションの原点ともいえる場所だと思います。 今回の舞台は、いろいろな意味で“最高級“なので、頂上が雲に隠れて山の本当の姿が見えないことがあるように、僕は想像以上の高い山を登ろうとしているのかもしれません。ですから、今は恐れ慄きながらも気合いを充実させて登山の準備をしていますよ(笑)。 ――彼が見せてくれる新たな景色をともに楽しもうではないか。 内野聖陽(UCHINO SEIYO) 神奈川県出身。1993年俳優デビュー。96年のNHK連続テレビ小説『ふたりっ子』で注目を集め、以後、舞台、映画、ドラマなど多数の作品に出演。2007年にはNHK大河ドラマ『風林火山』で主演を務めた。19年の『きのう何食べた?』での演技が話題となる。映画『八犬伝』が10月25日に、主演作の映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』が11月に公開予定。 『芭蕉通夜舟』 作:井上ひさし 演出:鵜山仁 出演:内野聖陽 小石川桃子 松浦慎太郎 村上佳 櫻井優凜 (東京公演) 会場:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 上演日程:2024年10月14日~10月26日 問合せ:こまつ座 TEL. 03-3862-5941 公式サイトはこちら (群馬公演) 会場:高崎芸術劇場 スタジオシアター 上演日程:10月29日 問合せ:公益財団法人 高崎財団 TEL. 027-321-7300 (宮城公演) 会場:名取市文化会館 大ホール 上演日程:11月2日 問合せ:ニイタカプラス TEL. 022-380-8251 (岩手公演) 会場:盛岡劇場 メインホール 上演日程:11月12日 問合せ:盛岡劇場 TEL. 019-622-2258 (兵庫公演) 会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール 上演日程:11月16日 問合せ:芸術文化センターチケットオフィス TEL. 0798-68-0255 (丹波篠山公演) 会場:田園交響ホール 上演日程:11月17日 問合せ:丹波篠山市立 田園交響ホール TEL. 079-552-3600 (名古屋公演) 会場:ウインクあいち 大ホール 上演日程:11月23日・24日 問合せ:メ~テレ事業 TEL. 052-331-9966 (大阪公演) 会場:枚方市総合文化芸術文化センター 関西医大 小ホール 上演日程:11月30日 問合せ:枚方市総合文化芸術文化センター TEL. 072-845-4910 BY SHION YAMASHITA