『ONE DAY』カレンと桔梗の対立構図が生んだスリル さながらドタバタコメディの様相も
自分がいったい誰なのか、その答えを知っていると思われた蜜谷(江口洋介)が目の前で車に撥ねられたことで、誠司(二宮和也)はもう一人の頼みの綱である桔梗(中谷美紀)に会うべく横浜テレビへと向かう。11月6日に放送された『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』第5話は、12月24日の正午を過ぎた頃、「日曜NEWS11」で事件特集の放送が叶わずに傷心気味となっていた桔梗の前に誠司が現れたシーンからスタートする。 【写真】カレン(松本若菜)と睨み合う桔梗(中谷美紀) 桔梗から記憶を失ったのではないかと訊ねられ、それを認める誠司。「俺は殺していない」と語る誠司に対して桔梗は、“天樹勇太”という名前と警察官だった父親が自殺していたという彼のバックグラウンドを告げると、無実を訴えるために独占インタビューを受けてみないかと提案する。一方、蜜谷の病室で柚杏(中村アン)と遭遇したカレン(松本若菜)は、彼女から蜜谷と誠司が繋がっていることを知らされる。さらにカレンは事故現場でカメラを回していた記者がいたという情報を頼りに横浜テレビの桔梗の元へ訪ねてくるのだ。そしてその頃、蜜谷は病室から抜け出し、ミズキ(中川大志)のアジトへと向かっていた。 今回のエピソードのメインフィールドとして機能するのは「横浜テレビ」の局内だ。美術倉庫という、テレビ局内でも“人目につかない場所”の定番スポットへと誠司を導く桔梗。そこに思わぬかたちで続々と人が入ってきてしまったり、なんとか逃げ出したもののクリスマス特番のリハーサル中のスタジオに入り込んでしまったり、さらにテレビ局のマスコットキャラクターである“はまテレちゃん”の着ぐるみで誠司を隠したことから、彼が“はまテレちゃん”として仕事をする羽目になる流れは、さながらドタバタコメディの様相だ。 しかもそこに、引き続き犬を探し続ける真礼(佐藤浩市)も介入してくるのだから尚更である。それでも逃亡犯の誠司が紛れ込んでいるなか、“追う側”のカレンと着ぐるみ越しにニアミスする点や、睨み合うカレンと桔梗の対立構図がスリルを生む。そして何よりも、逃亡犯の独占インタビューという大スクープを前に目を輝かせる査子(福本莉子)に、偶然にも桔梗と査子の話を聞いてしまった黒種(大水洋介)が貫こうとする報道マンとしての矜持。メディアの人間を描く上で欠かせない部分がじわりとあらわれはじめる。 それは「レストラン編」でも同様だ。相変わらず「逃亡者編」と「地方テレビ局編」とは違うテイストを維持し、今回も査子に想いを寄せる細野(井之脇海)を前にして梅雨美(桜井ユキ)が時生(大沢たかお)に査子に恋人がいるのかと訊ねる一連であったり、菊蔵(栗原英雄)の妻との不仲をめぐる一連があったりとコメディタッチの掛け合いが繰り広げられる反面、ディナー営業に向けて本格的に試作品作りをはじめるなど“レストラン”としての機能が活かされはじめる。 そんなレストランで繰り広げられる時生と梅雨美の会話のなかでは、時生が誰かを待ちつづけていることが仄めかされる。さらに手伝いを呼ぶという話の流れから、携帯電話を手に取った時生が気付く違和感。前回の終盤で、誠司とぶつかった際に落下した携帯電話は、やはりすり替わっていたということか。そして誠司が父親の墓を訪れて見つけた、手向けられた花。今後へと繋がるフックがいくつも提示され、今回もまた1時間少々の進度。聖夜の終わりまでは、あと11時間弱といったところか。
久保田和馬