法律で50代定年を強いられる自衛隊「年収1000万円でもうらやましくない」将官の“その後”の人生の末路
その多くが50代で定年を迎える自衛官。そのため、ほとんどの自衛官が再就職を余儀なくされる。そして「自衛隊を定年後に再就職が必要」というのは、自衛隊トップの地位にある将官とて例外ではない。将官ともなれば再就職先での収入が1000万円を超えるケースも多いが、防衛大卒のライター松田小牧氏によると、その内実は決して「充実した第二の人生」といえるものばかりではないという。自衛官トップの“その後の人生”とは――。 ※本記事は松田小牧著『定年自衛官再就職物語―セカンドキャリアの生きがいと憂鬱―(ワニブックスPLUS新書)』から抜粋、再構成したものです。
50代で定年を迎える自衛官
民間企業では2021年、高年齢者雇用安定法の改正によって65歳までの雇用確保が「義務」とされ、70歳までの就業機会の確保についても「努力義務」となった。その結果、ほぼすべての企業が65歳までの雇用確保措置を実施するようになり、70歳以上まで働ける制度を設けている企業も2021年度時点で約4割に上る。 そんな中、自衛隊では早ければ54歳(2024年10月からは55歳)で定年を迎えることが法律で定められている。2024年4月現在、定年年齢は将官(幕僚長は除く)で60歳、1佐で57歳、2・3佐、1・2・3尉、准尉、曹長、1曹が56歳、2・3曹が54歳となっている。人数比から見たときには、56歳で定年を迎える隊員が圧倒的に多いということになる。 このように、法律によって50代での定年を強いられる組織はほかにない。自衛官以外の公務員も2022年度までは定年年齢が60歳となっていたが、改正国家公務員法により2023年4月からは61歳に引き上げられた。今後も2年ごとに1歳ずつ引き上げられることが決まっており、2031年度には65歳となる運びだ。自衛隊でも徐々に定年年齢が延長されているが、民間のような「65歳定年」となるのは現状では考えづらい。 なぜ、自衛隊だけにこのような制度が設けられているのか。それは自衛隊が持つ任務の特殊性にある。いかに鍛錬を重ね若々しく見える50代でも、いざ近接戦闘となれば、20代の若者に勝ることは難しい。そこで、軍隊組織としての強さ、自衛隊でいうところの「精強さ」を保つためには、ある程度の若さが必要だと判断されているのだ。