専門家「不審者いればすぐ逃げて」 孤立受け入れる重要性も 通り魔事件、身を守るために
北九州市小倉南区のマクドナルド322徳力店で14日夜、中学3年の男女が殺傷された事件で刺され、女子生徒が殺害された事件では、被害に遭った男子生徒が「全く知らない人に刺された」と説明した。通り魔的犯行との見方も浮上する。無差別に人を狙う通り魔事件は後を絶たず、専門家は「体感治安が悪化している」と危機感を抱く。自衛策としてリスクを避けるための「緊張感」と、孤立している人を受け入れることの重要さを訴える。 【写真】中学生の男女が刺される事件があった店舗。女子生徒の父「大変心痛めている」 令和元年5月には、川崎市多摩区でスクールバスを待っていた小学校の児童らが男に包丁で襲われる通り魔事件が発生し、20人が死傷。3年8月には東京都世田谷区を走行中の小田急線車内で男が刃物を振り回し、乗客を切り付ける事件も発生した。 治安問題やテロ対策に詳しい日本大危機管理学部の福田充教授(危機管理学)は「街中のファストフード店で刃物で刺されるなど、これまでなら想像もできない事態だ。体感治安は悪化しつつある」と危機感をにじませる。福田氏は「自分のいる場所で事件が起きるかもしれないとつねに意識して、緊張感を持ってほしい。もし不審な人間がいればすぐに逃げるべきだ」と話す。 子供たちの安全をいかに守るかも重要な課題だ。福田氏は平成13年に児童8人が犠牲になった大阪教育大付属池田小児童殺傷事件以降、各学校のセキュリティーは強化されていると指摘し、「学校にいる間は被害に遭うリスクは低い」とする。 一方、登下校時の警戒を重要視。北九州市の事件を受けて、各学校では、保護者や地域住民による見回りの強化や集団登下校が行われる。福田氏は「保護者や地域住民は防犯のプロではなく被害者になりうる立場」として、不審者を見かけた場合も、安易に声をかけるなどせず、警察への迅速な通報や、逃げることを求めた。 これまでに発生した無差別殺傷事件の犯人には、社会に強い不満を持って自暴自棄になったり、精神的な不調があったりする傾向がみられる。福田氏は「心の不調は誰にでも降りかかるもの。医療的なケアにつなげるのが重要だ」と指摘。「孤立している人を社会の中でどのように包摂するのか、根本的な議論をしていくべきだ」と強調した。(内田優作)