来年も「デスターシャ」!侍ジャパン4番に成長のDeNA牧秀悟「僕がベンチ最前列で叫ぶ」納得の理由
凡退しても声を出し続ける。 反省は部屋に戻って一人になってから
ユニフォームを着ていてもわかる分厚い胸、巨木のような太い腕――。 取材場所に現れた横浜DeNAベイスターズの牧秀悟(25)には、身長178㎝とプロ野球選手としては大柄とは言えないながらも力強さが漲(みなぎ)っていた。 カメラに向かって「デスターシャ」!牧秀悟が色紙につづった来期の目標は…?【写真】 「責任を感じていますが嬉しいです。やるからには結果を出したい」 牧がこう語るのは、「侍ジャパンの4番」の重責を任されているからだ。野球日本代表の井端和弘監督が牧を主砲に指名。今季の牧は打点王と最多安打のタイトルを獲得し打率.293、29本塁打、103打点と、ジャパンの4番にふさわしい成績を残している(以下、発言は牧)。 「これで満足はしていません。好機で確実に打てるようになり、もっと打点を増やし来季もタイトルを獲りたいです」 日本を代表する打者に成長した牧の軌跡を、以下に紹介したい。 牧が野球を始めたのは小学校1年の時だ。幼い頃の鮮明な記憶の一つが、長野県中野市にあった祖父の家の庭にネットを張り打撃練習をしたことだという。 「両親が共働きだったんですよ。だから近くにあった野球経験のある祖父の家に行き、練習するのが日課でした。今でも祖父とは仲がいいんです。打撃で悩んだ時には祖父に電話したこともあります。『迷わず思い切っていけ』と言われ、モヤモヤした気持ちが吹き飛びました」
高校は、野球では無名だった地元の松本第一高へ進学。中央大学に入ってからも、1、2年の時は結果が出なかった。 「転機は3年になる直前の合宿でした。バッティングスタイルをガラリと変えようとコーチと試行錯誤し、下半身の力を上半身にうまく伝えるために重心を低くしたんです。これがバチッとハマッた。ボールを呼び込み、強い打球が飛ばせるようになりました。プロになることが、自分の中で現実的になったんです」 打撃を改良した牧は3年春の東都リーグで首位打者、秋にはMVPを獲得する。日米大学野球の日本代表にも選ばれ、’21年にドラフト2位でDeNAへ入団。オープン戦から結果を残し、開幕戦では新人ながら3番に抜擢された。プロとして順調なスタートを切ったようだが……。 「もう必死でした。変化球も速球も学生とはレベルが違う。プロの球に慣れるため打った時にどんな感触だったか、どんな球筋だったか、各投手についてメモを取りまくりました。攻守入れ替えの短い時間でも気づいたことを書いていましたね。今でもメモの習慣は続けています」 さらに牧を悩ませたのが、学生時代に経験のない連日の試合や遠征。疲労が蓄積し開幕当初は4割近かった打率が、5月には2割台半ばまで下降する。 「幸運だったのが、東京五輪で8週間ほど中断期間があったことです。身体を休められただけでなく、打撃を見つめ直せました。当時の打撃コーチ・坪井(智哉)さんに『真っすぐに押されている』と指摘され、ストレートを強くはじき返すことを意識するようにしたんです」 牧には変わらないスタイルがある。たとえ凡退してもエラーしても、ベンチの最前列から身を乗り出し味方を大きな声で鼓舞(こぶ)しているのだ。 「僕は少年野球のころから、ずっと最前列で叫び続けています。チームの勝利が一番。だから味方の打者が打てるように、不調の時でも一所懸命応援しているんです。落ち込んだ姿を見せても、周囲に少しもメリットはないでしょう。もちろんミスしたら、気持ちは沈みがちになるし悔しいです。でもチームに悪影響が出ないよう、部屋に戻り一人になってから反省するようにしています」 ひたむきな姿勢は、両親の教えが影響しているようだ。 「親からは『常に謙虚でいなさい』と、繰り返し言われてきました。どんなに活躍しても良い結果が出ても、調子に乗らず謙虚にいるようにしています」 ゲーム好きの牧には、ホームランを打った時のお決まりのパフォーマンスがある。拳(こぶし)を握った腕を胸の前に出す「デスターシャ」だ。人気ゲーム『マリオカート』を実況する、ウクライナ出身のユーチューバーの決めポーズでもある。 「来季は、より多くの『デスターシャ』をファンに見てもらいたいです」 ハマの主砲で日本の4番――。球界を背負う立場になっても、牧はベンチ最前列から身を乗り出し叫び続ける。 『FRIDAY』2023年12月1日号より
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