三菱ケミカルグループ がん治療と仕事の両立体験、社員で共有 「がんサロン」と情報発信の2本柱
【わが社の「健康経営」】三菱ケミカルグループ 一生のうちにがんと診断される日本人の確率は2人に1人。加齢とともにがん発症リスクは上がる。超高齢社会の日本では労働人口の高齢化も進み、仕事と治療の両立を考えざるをえない。厚労省もガイドラインを作成するなど支援しているが、職場の意識改革も不可欠になる。そんな治療と仕事の両立を目指す従業員の新たな「つながり」の場で、三菱ケミカルグループが成果を上げている。 【自分ひとりじゃないと思える場所】 同社は2017年に健康経営宣言をし、治療と仕事の両立支援に関する制度や体制を整え、研修などでの啓発や相談窓口の明瞭化などに取り組んできたという。 「当時、製造拠点に比べて本社従業員のがん相談や復職支援の機会が少なかったのです。当事者の声が聞けないと支援策を新たに打ち出すことが難しい。そこで経験者のためのつながりの場として『All WorkCAN'S』を開始しました」と、同社人事部健康支援グループ保健師で両立支援コーディネーターの山本香織さんは明かす。 2019年に開始したつながりの場は、オンラインによる就業時間中の「がんサロン」と、がん教育などの情報発信の2本柱で浸透し、23年に三菱ケミカルグループ全体に拡大したという。 「経験者で定期的に参加してもらえる従業員に、WorkCAN'Sアンバサダーとして協力してもらい、従業員による従業員のためのがん教育の活動も実施しています」(山本さん) 【復職や前向きな気持ちを後押し】 がんの種類や治療法にもよるが、手術後の薬物療法を続けながら職場復帰をする人もいる。治療の影響で身体状態が万全でないと、「周りの人に迷惑をかけるのではないか」など不安な気持ちが膨らむことがある。 「WorkCAN'Sアンバサダーが『私の場合はこうだった』といった実体験を語り、『無理しないで周りの人を頼るといいよ』といった話を聞いて『心が軽くなりました』という従業員はたくさんいます。再発の不安も経験者の話に共感すると、気持ちが楽になることがあるのです」と山本さん。 同じ職場環境の組織文化や制度のため、従業員にとって相談しやすく共感も得やすいのが、社内コミュニティーのメリット。気持ちを分かち合える場であるため、不安な気持ちが膨らんだときに参加すると、気持ちを吐露することで前向きな気持ちにもなれるという。