県と市でW受賞!藤井八冠に新たな“称号”、贈呈品・硯の“丸み”に職人が込めた想い
県民栄誉賞のお礼に藤井八冠が準備したものは、「大志」と揮毫(きごう)した色紙。過去、大村知事に21手詰めの詰め将棋を描いた色紙を手渡したことがある藤井八冠。大村知事曰く「うちの県庁の有段者に解かしてみたら、80分かかった」という難問だったという詰め将棋。「今回は詰め将棋ではありませんのでご安心ください」と笑みを浮かべながら色紙を手渡し、対局中には見られないチャーミングな一面も覗かせた。
新城市の鳳来寺山の麓に店を構えて130年となる「鳳鳴堂硯舗」。今から51年前、新城市で将棋のタイトル戦が行われた際、先代の四代目がタイトル戦の戦いを硯で表現した「名人硯」を手がけるなど、将棋界との関わりも深い硯店だ。今回の硯では、愛知県新城市で採れる“金鳳石”と呼ばれる良質な石を使用。光をあてると、中に含まれる黄鉄鉱がキラキラ光る表情が特徴だ。
藤井八冠の印象について、「彼の将棋を指す姿、そして勝ってインタビューを受けている姿を見ていると、なにか柔らかい線を感じた」という名倉さん。この“柔らかさ”こそ、記念品の硯に“丸み”が施された理由。「将棋の駒をデザインに取り入れることは根底にあった。藤井八冠の笑顔、若く爽やかな佇まい、温和な話し方。(藤井八冠がもつ)柔らかい物腰と素直な線を、シンプルでホワッとした曲線で表現しようと思った」と、デザインに込められた想いを明かした。
続けて、「(最近は)墨汁を使う方が多いので、硯をつくる方が日本でも数人ぐらいになってしまった。そういった寂しい中で、私の方まで(記念品つくりを通して)活躍の光を当ててくれたことが非常に嬉しい。自分も、もう少し頑張らなという気になります。ありがたいことです」と感謝を述べた。
“実践の感覚”を失わないように取り組んでいきたい
“八冠達成”という偉業に続き、「瀬戸市名誉市民」・「愛知県県民栄誉賞」のW授賞を果たした藤井八冠。瀬戸市役所で行われた会見では、「(街全体で)応援いただいていて、その応援が励みになっています。今後も応援を励みにして、良い報告ができるよう精進していきたい」と授賞の喜びを滲ませた。続けて、「1年間の対局を振り返ると、上手くいったところと、そうでなかったところがあった。それを一つ一つしっかり振り返って改善していきたい。少し対局が空くので、実践の感覚を失わないように、しっかり取り組んでいきたい」と、これから続く戦いへの決意を表した。