133連勝中の「驚異の少女」 女子レスリング藤波朱理 その強さの秘密
レスリング女子53キロ級の20歳、藤波朱理(日体大)は中学時代の2017年から勝ち続けている。昨年9月の世界選手権で早々にパリ五輪代表を決め、現在は連勝を133にまで伸ばした。白星街道で突き進むパリへ「金メダルをつかむ。絶対にかなえたい夢」と気持ちを高める。五輪4連覇、不戦敗を除いて189連勝の記録を持つ伊調馨(ALSOK)の薫陶を受け、大一番に備える。(共同通信=七野嘉昭) 【写真】藤波朱理、桜井つぐみに快勝 レスリング代表対決、133連勝
▽栄光の歴史、新時代を担い 五輪のレスリング女子は、藤波が生まれた翌年の2004年アテネ大会から採用された。日本女子は伊調、五輪3連覇の吉田沙保里を軸に栄光の歴史を築き、東京大会まで金メダルを計15個獲得。東京大会は伊調、吉田がいない初の五輪だった。 パリへも激しい代表争いが繰り広げられ、東京大会からの連続出場は50キロ級金メダルの須崎優衣(キッツ)だけ。藤波は昨年6月の全日本選抜選手権で東京五輪女王の志土地真優(ジェイテクト)に圧勝し、世代交代を果たした。新時代を担い「藤波朱理のスタイルを貫きたい」と堂々と話す。 伊調は藤波をこう評する。「朱理はまだまだ根を張っている段階。これから伸びてくる。魅せるレスリングができるのでは」 53キロ級で長身の164センチ。長い手足を生かした闘いは攻守に隙がない。50メートル走は「8秒後半。普通の子より遅い」というほどだが、タックルは遠い間合いから流れるように入る。「瞬発力よりタイミング。0コンマ何秒の単位で考える」
男子のトップ選手も研究し尽くした伊調の緻密な技術を学び、組み手やタックルは手の指の角度まで意識する。スパーリングでは1本目から胸を借りることも珍しくないという。雑な攻撃は鉄壁の防御に封じられる。ともに汗を流して育てる伊調は「勢いよく向かってくる。こっちはまだ体が温まっていない時もあるのに」と苦笑しながら、情熱を受け止める。 昨春、伊調が雑談の中で「1試合が6分で終わるのはもったいない。研究して練習しているのだから1時間でも闘いたい」と話しているのを聞き、その貪欲な姿勢に感銘を受けた。強さを追求し、結果以上に内容にこだわる意識も同じだ。 連勝記録を「過去のもの」と言い切るが「注目されるのは好き。どんどん注目してほしい」とプラスに捉えている。 ▽五輪の魔物 レスリングではこれまでも連勝記録が注目された。ジュニア時代の記録が中心の藤波とは対照的に、吉田と伊調は世界のトップレベルで無敗を誇り、五輪開催年にはまさかの敗戦を喫し、苦境から巻き返した。