【山口県】顧客に愛され110年 4代目店主の「理容フジイ」
山口県下松市古川町の理容フジイが今年、開業から110周年を迎えた。 店主の藤井由紀子さん(79)は4代目。6年前に夫の靖久さんが亡くなってから1人で店を切り盛りする。地域に根付いた理容店として、赤ちゃんから90代の常連まで、今も多くの人が足を運んでいる。 1914年に靖久さんの祖父が現在地からほど近い場所に開業。64年に靖久さんが母から店を引き継ぎ、藤井さんと結婚したタイミングで現在地に移転した。以来、60年間、同じ場所で変わらず営業を続けている。 藤井さんは中学を出て理容フジイに就職。働きながら防府市の職業訓練学校に通って理容師の資格を取得した。これまでに大手企業の役員や工場長、自営業者、学校教員、会社員など様々な立場の男性客の髪に触れてきた。高度経済成長期には、他県出身で知り合いのいない若い会社員が対話を求めて同店を利用したという。
地域の理容店はリラックスできて落ち着ける場所。藤井さんが仕事や家庭の悩みの聞き役に回ることもある。居心地が良く、生まれたばかりの頃から通い続ける60代の男性もいるほどだ。 現在のリピーターは約130人。月曜と火曜以外の週5日はほぼ店に立つ。立ち仕事が続いたため、67歳の時に右足、70歳で左足の付け根を手術し、人工関節にした。はさみを握る手の関節も痛むが「色々な人と関わることができるこの仕事は楽しい。良いお客さんに恵まれ、それが財産」と笑う。 時代の変化に合わせキャッシュレス決済も導入。「元気なうちは続けていき、お客様と一緒に年を取っていきたい」と話す。