ネーミングライツの狙いは? 宮城の3社に聞く
公共施設のネーミングライツ(命名権)を取得する企業が増えている。かつてはスポーツ・文化施設が中心だったが、最近は契約金額が比較的小さい道路やダムといったインフラにも広がる。命名権を取得した企業はどんな狙いで契約したのか。宮城県内の3社に取材した。(経済部・樋口汰雅) 【写真】清月記が命名権を取得した鷺ケ森歩道橋 ■ダム「自然意識する機会に」 産業用機械などを手がけるグローテック(大衡村)は9月、県が管理する宮床ダム(大和町)の命名権を年間30万円で取得。「グローテック宮床ダム」の愛称が県のホームページなどで紹介され、県仙台地方ダム総合事務所(仙台市)で配布している「ダムカード」にも社名が明記された。 同社は2022年、みやぎ産業振興機構(仙台市)の中核企業創出に向けた「ステージアップ企業」に認定され、事業を拡大。機構の担当者からダムの命名権を紹介され、地域貢献活動の一環で取得を決めた。 種沢直樹社長(43)は「事業はBtoB(企業間取引)のため、命名権取得が受注増につながるわけではない」としながらも「地域の子どもたちが自然や将来を考え、社員の自然環境を守る意識が高まるきっかけになればいい」と話す。 ■町道「愛される店舗目指す」 宮城第一信用金庫(仙台市)は創立70年を迎えた21年、宮城県亘理町の中心部を通る町道南町鹿島線の命名権を年間20万円で取得。愛称「みやしん通り」の道標が設置された。通り沿いで同信金の亘理支店が営業している縁があった。 JR亘理駅に近く、町民の通行量が多い道路であることも理由。当初の3年契約は今年7月に満了したが、同信金は3年間の延長を決めた。担当者は「みやしん通りと共に、町の皆さんに愛される金融機関になるよう努めたい」と語った。 ■歩道橋「会社の名広める戦略」 仙台市は14年、市内の歩道橋12カ所に初めて命名権を設定し、現在までに約30カ所に拡大した。 冠婚葬祭業の清月記(仙台市)は、青葉区の「鷺ケ森」や太白区の「西多賀」など4カ所の命名権を年間計214万円で取得。菅原裕典社長(64)は交通量などを含め取得場所を検討していると明かし「会社の名前を知ってもらうための戦略の一つ」と強調した。 ■スタジアムや県民会館…来春は西公園にも 公共施設のネーミングライツは、国内では2003年に東京都の東京スタジアム(府中市)が「味の素スタジアム」となったのが始まり。宮城県内では05年、プロ野球に東北楽天が新規参入した際、県が本拠地の県営宮城球場(仙台市宮城野区)に初めて導入した。 宮城球場の命名権を最初に取得したのは人材派遣業のフルキャスト(東京)。契約期間は3シーズンにわたり、「フルキャストスタジアム宮城」の名称を記憶する楽天ファンは少なくない。現在は楽天グループが年間2億100万円で保有し、球場名は「楽天モバイルパーク宮城」となっている。 県は県民会館(仙台市青葉区)の命名権についても東京エレクトロン宮城(大和町)と年間3000万円で契約するなど、これまでに文化施設や公園を中心に43の命名権を設定した。 仙台市は06年、仙台スタジアム(泉区)に初の命名権を設けた。同年に権利を得たユアテックは、現在も年間5000万円で契約を継続。サッカーJ2仙台の本拠地「ユアテックスタジアム仙台」として市民に親しまれている。 この他、市体育館(太白区)をはじめ15の施設と歩道橋約30カ所にも命名権を導入した。来年4月には西公園(青葉区)などにも対象を拡大する予定という。
河北新報