パリ五輪金のリディア・コ（写真：Getty Images）

　パリ五輪の女子ゴルフはニュージーランドの27歳、リディア・コが金メダルに輝き幕を閉じた。 　プロの試合を14歳で制し石川遼の最年少記録（15歳）を塗り替え、男女を通じて世界最年少優勝を達成して以来、数え切れないほど多くの最年少あるいはツアー記録を樹立し、ゴルフが五輪競技に復活して以来3大会すべてでメダル（リオで銀、東京で銅、パリで金）を手にした唯一無二の存在、それがコだ。 　人生の半分以上をスポットライトの中で過ごしてきた彼女は、今回の金メダルでLPGA（全米女子プロ協会）殿堂入りを果たした。すでにレジェンドのような存在だが、コがすごいのは記録ではなく人柄だ。 　18番でウィニングパットを沈めたあと、スコアカードにサインすることより優先したのが、ボールにサインをして帯同してくれたスコアラーやボランディアに手渡すことだった。 　ライバルのナイスプレーに喝采を惜しまず、東京五輪で銅メダルを獲得した時には1つ上（銀メダル）の表彰台に上がった稲見萌寧を「本当に素晴らしい」と心から称賛。 　ファンがサインや写真を求めればいつでも応じる温かい人。世界最高レベルの実績を持ちながら決しておごることなく地に足をつけた行動で誰からも慕われている。 「今年の半ばに少し苦しんで、メダルは無理かもしれないと思った時がありました」。そんなとき2人の人物が「メダルを獲れなくても、あなたは信じられないようなキャリアを積んできた。殿堂入りしてもあなたは特別な存在ではない」と言ってくれた。母と夫である。 「母と夫は私に『殿堂入りするかどうかに関わらず、あなたを誇りに思っているし、あなたは私たちが望んでいたもの以上を成し遂げてくれた』と言ってくれたのです」 　殿堂入りの条件である27ポイントまであと1ポイントと迫っていたコが金メダルなら殿堂入り。銀でも銅でも殿堂入りはならなかった。 「2人の言葉があったから、もし勝てなくてもそれは私の運命なのだと思いました。全力を尽くして勝っても勝てなくても、それをコントロールするゴルフの神様がいると思ったのです」 　そして彼女は言った。「将来の世代に刺激とモチベーションを与えることができたらそれが私にとって一番の喜びです」