服部未佳アナウンサー） イギリスのロンドンにある大英博物館です。世界中の貴重な作品や史料が展示されていることで有名です。 ここに収蔵されている襖絵「秋冬花鳥図」。この作品は全部で8枚あるはずなのですが、秋と冬を描いたこの4枚のみが大英博物館で展示されています。 では、春と夏を描いた残りの4枚はどこに眠っているのでしょうか。長らく行方不明だったその4枚が、青森県中泊町で見つかりました。 【元京都国立博物館 主任研究員　山下善也さん】 「宮越家『詩夢庵』の襖絵18面は、イギリス・大英博物館『花鳥図襖』、アメリカ・シアトル美術館『琴棋書画・仙人図襖』と一連の襖絵である」 安土桃山時代後期から、江戸時代初期の狩野派による襖絵「秋冬花鳥図」。元々は奈良県の談山神社にあり、現在は大英博物館に収蔵されています。 この襖絵と対になる「春夏花鳥図」が、「奇跡のステンドグラス」で知られる中泊町の旧家・宮越家の離れ「詩夢庵」に眠っていました。 大正9年、宮越家9代目・正治が妻・イハに贈った離れ「詩夢庵」。最も格式の高い部屋を飾る「春夏花鳥図」は、正治がオークションで競り落としました。 春の桜・キジ。夏の渓流・青い山。「秋冬花鳥図」と画風や引き手の模様が一致すること、絵柄がつながることが、対の作品だと確信する決め手となりました。 【元京都国立博物館 主任研究員　山下善也さん】 「（正治が購入した翌年）関東大震災で美術品が大変たくさん焼けてなくなった」 「青森に来たことによって、それが救われたというふうにも見られるんじゃないかなと思います」 「大英博物館の襖絵の裏側は、アメリカのシアトル美術館にあるわけで、地球規模で美術品が移動しているということも、各地の人たちに大切にされているということは非常に素敵なことだと思います」 宮越家12代目当主・寛さんは―。 【12代目当主　宮越寛さん】 「襖絵どころじゃない、（苦しい）時代が長く続いた。その時に支えてくれたのが、地域の皆さんで、そのことによって宮越家が成り立ってきた。声を大にしてお礼を言いたいです」 服部未佳アナウンサー） 「春夏花鳥図」を購入した9代目・正治さんの優れた審美眼が伺えます。400年前の作品がきれいな状態で残っているのは、宮越家の人々が謙虚に大切に守ってきたから。12代目当主・寛さんの母・恵美子さんと、妻・幸子さんが丁寧な掃除や換気を続けてきたからなんです。 詩夢庵には、貴重な襖絵全部で18枚とそのほか様々な美術品が眠っています。 10月4日から秋の一般公開が始まります。中泊町文化観光交流協会のホームページを確認してみてください。