加藤和樹「幸せな、心がほっと温まる作品をひとりでも多くの方に」舞台『裸足で散歩』公開台本読み合わせ&稽古場会見
2022年に東京をはじめ、全国5カ所で上演され、各地で好評を博した舞台『裸足で散歩』が11月18日(金) より銀座 博品館劇場にて上演される。今回、全キャストによる台本読み合わせの様子が公開。併せて稽古場会見が行われた。 【全ての写真】舞台『裸足で散歩』台本読み合わせの様子 ブロードウェイを代表する喜劇作家のニール・サイモンによる戯曲である『裸足で散歩』。サイモン自身が映画用に脚色し、1967年に映画も公開され、世界中で大ヒットした。 物語の舞台となるのは2月のニューヨーク。古いアパートの最上階に引っ越してきた新婚のポール・ブラッターとコリー・ブラッター。エレベーターもなく、天窓には穴が開き、暖房も壊れ、家具も届いていない。極めつけに、夜には雪が降るのだとか。そんな踏んだり蹴ったりの中、あるのはポールとコリーの愛だけ……!? さらに、アパートには不思議な住人もいた。屋根裏部屋に住むヴィクター・ヴェラスコはブラッター家の窓を通って自分の部屋に入っていく。そんな住まいでの生活を、コリーは気に入り、楽しんでいたが、夫のポールは馴染めずにいた……。 2年ぶりの再演となる本作。真面目な新米弁護士・ポールを加藤和樹、自由奔放な妻・コリーを高田夏帆が。そして、屋根裏部屋に住むヴィクターを松尾貴史、コリーの母・バンクス夫人を戸田恵子が再び演じる。そして、電話会社の男役には福本伸一が新たに参加する。演出を務めるのは前作同様、元吉庸泰だ。 台本読み合わせでは3幕のうち第1幕に当たる部分を披露。読み合わせは2回目とのことだが、冒頭から高田と福本がコミカルな掛け合いを繰り広げる。稽古場に高田の声がよく通る。 予想外のことだらけの新居に戸惑いながらも楽しげにしているコリー、それに対し、不安いっぱいの様子を見せるポール。暖房も効かない部屋でどうやって過ごせと? と困惑する。 さらに、そこにサプライズで訪れるコリーの母・バンクス夫人。バンクス夫人も娘夫婦の新居のありさまに戸惑いを隠せない。すでに問題だらけの新居だったが、ヴィクターまで登場し、ここから一体どのように展開するのか、と期待を高めてくれた。 キャストたちの白熱の読み合わせに、見学している報道陣からつい笑いが漏れる場面もあった。 稽古場会見で、演出の元吉は初演の手ごたえを「サイモンの戯曲を、福田響志くんというとても若い方に翻訳していただいて、現代に蘇らせることができたこと」と語り、その上で再演については「非常に今、いろいろ生きづらい状況になっている中で、サイモンの本は普遍的。今いろんなところにつっかかっている人たちの何かヒントになるのではないか、というところを引き立てていけたらな、と考えながら楽しんでやれればと思っております」 自身が演じるポールについて加藤は「非常に真面目でとにかくコリーのことを愛しており、ちょっと融通が利かないところもありますが、とても愛されるキャラクターです……と自分で言っちゃってます」とにっこり。 そして、「融通が利かないことが原因でコリーとぶつかってしまうこともあるのですが、すごく真面目で曲がったことができない役どころですので、彼のようにまっすぐ、この役に向き合っていきたいなと思います」。 高田は2年前に上演された『裸足で散歩』が初舞台だった。「その舞台が再演になるなんて、こんな嬉しいことはない」と表情を輝かせる。2年前との違いについて「2年前はコリーのセリフ量と、動く量とすごく戦って、もう周りが何も見えずに自分のことで精一杯だったので、今回はもう少しみなさんに溶け込みたいっていう気持ちはありますね」と振り返りつつ、「あと、コリーはちょっとうるさいので(笑)、そこを何とか受け入れてもらえるように。ポールもコールも2年前より愛されたいな、と言う気持ちがあるので、そこを詰めていければなと思ってます」と思いを語った。 そんな高田演じるコリーの母・バンクス夫人を演じる戸田。戸田も約40年前にコリーを演じたことがある。戸田にとっては『裸足で散歩』が初めてのストレートプレイの舞台だった。「こんなにたくさん喋る舞台は初めてで、とにかく嫌だったな、という思い出がある。私の場合、比べるものもたくさんあったので」と言って笑いを誘った戸田。 「でも、がんばってやった成果というか……作品がいいんですよね。好評をいただいて、あとから思うと、いい出会いだったな、と。私は本当にぐちぐち言いながらやっていたので、夏帆ちゃんがまっすぐな気持ちでおやりになっていたのを横で見ていて、逆に私は母としてちゃんと成り立っていたのかな、と思って。そこが大きな課題ですので、2年という年月を経てより可愛く演じたいな、と思います」と意気込みを語った。 今回、唯一の再演からの参加の福本は「かなりのプレッシャーがありまして本稽古に入る前にもう体に入れておこうと思って、このひと月頑張ってまいりました」。一幕の冒頭、そして三幕の頭でも登場するということで、「そのときはまた電話修理にしに来るんですけども、またつらいシチュエーションで。とても僕はそのシーンが好きなんですが、ぜひそれを立体的になったときに見ていただいて楽しんでいただければいいなと思います」。 そして、松尾は公開台本読み合わせの感想を「楽しい舞台になりそうですね」と笑顔を見せた。台本を読むことを「お客さんのイマジネーションというものにカップ麺にお湯注ぐみたいな感じのことを僕らはやっていくっていうことだと思う」と松尾。「言葉だけ、音声だけで聞いていただいたものが少しでも面白いと思っていただけたら。(舞台は)その掛け算になることだけは確かだと思います」と期待が高まるメッセージを伝えた。 最後に「少数精鋭で臨みます『裸足に散歩』ですが、本当に毎回思うのですが再演ができる喜びというものをいつも感じております。やはりまた見たいと思ってくださる皆様がいなければですね、再演をすることもできません。それに今回は全国各地を回らせていただけるということで、この幸せな、心がほっと温まるようなハートフルコメディの作品をひとりでも多くの方にお届けしたいなと思います」と加藤が挨拶。 『裸足で散歩』は9月27日(金) の大阪公演を皮切りに、茨城、神奈川、静岡、東京、北海道、宮崎、大分、宮城、愛知、香川で上演予定だ。 取材・文:ふくだりょうこ 撮影:岡千里 <公演情報> 『裸足で散歩』 東京プレビュー公演: 【曳舟】2024年10月10日(木)曳舟文化センター 【西東京】2024年10月13日(日) タクトホームこもれびGRAFAREホール 東京公演:2024年11月8日(金)~11月19日(火) 銀座 博品館劇場 他、大阪、茨城、神奈川、静岡、北海道(幕別、士別、中標津、札幌、大空)、宮崎、大分、宮城、愛知、香川公演あり。