「小説ごときで娘は殺されたのか。絶対に、絶対に許さない。」「遺体を引き取って顔を見ました。そこで私は子守唄を歌いました」遺族らが青葉真司被告に伝えた"ことば"【ドキュメント京アニ裁判⑱】
「善人だった私は、犯人に明確な殺意を持った悪人の予備軍となりました」
――母親の意見陳述に続いて、結花さんの姉の意見陳述の書面が、代理人を務める女性弁護士によって読み上げられた。 妹は、私が漫画を又貸ししたのを気に入って、絵を描き始めたようです。大学のころ「アニメーターになる」と言っていた妹は、見事京アニのアニメーターとなり、素直にすごいと思いました。自慢の妹でした。 事件の日、両親より先に現場に到着すると、現場は焦げ臭いにおいがして、警察の黄色いテープをくぐると、妹がまだ見つかっていないこと、中にまだ多くの人が取り残されていることを聞きました。私は、焦げ臭いにおいに、人の焼けているにおいも混ざっているのだと気づき、血の気がサーっと引きました。 私は善人だった妹を失い、善人だった私は、犯人に明確な殺意を持った悪人の予備軍となりました。作品を作り続け、多くの人を元気づけてきた人の命を奪うことは、普通の殺人の範疇に値しないと思います。多くの人の魂を汚した犯人は、万死に値すると思います。 妹が無理してやっと叶えた夢が絶たれた原因はなんなのか。被告人がどのように罪を償い、どう命を終えるか知りたいのです。判決がどれだけ理不尽であっても、私はそれを刻み付ける覚悟があります。法律家、裁判員の皆様によって、正しい判断がなされることを願っています。
入社1年目で犠牲 母親の思い
――この日の最後に意見を述べたのは、入社1年目で犠牲となった兼尾結実さんの母親だった。 1階のフロアで、結実がいた場所を聞くと犯人のすぐ近くにいたのだと思いました。警察の方から結実の足が欠損していて一部がないと聞いたとき、逃げられなかった状況が思い浮かびました。結実の遺品として受け取った腕時計は、10時40分で止まっていました。 結実に会うのは翌日になる予定でしたが、私が「どうしても、一刻も早く会いに行きたい」というと、結実が安置されている場所へ案内してもらえ、ようやく会うことができました。私は結実を抱きしめて、「熱かったね。よく頑張ったね。助けてあげられなくてごめんね。代わりたい、代わりたい」とたくさん泣きました。