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　2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」 　しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。 　もはや誰もが大地震から逃れられない時代、10刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 　(※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)

自分で消火できる限界

　東京消防庁には、阪神・淡路大震災で応援に向かったときの苦い教訓がある。 　道路の倒壊による通行止めや停電で信号が停止するなどの影響から被災地で生じていた大渋滞に遭い、緊急車両であるにもかかわらず現地到着が思うように進まなかったことだ。 　さらに瓦礫やブロック塀、電柱が障害となり、火災現場に近づくこともできなかった。地震発生後の神戸市では全域で断水し、防災貯水槽も地震でひび割れて水が漏れてしまい、燃え広がる炎を前に「水がない」という想定外の事態も生じている。 　目の前で出火した際、自分で消火できる限界は「炎が天井に到達するまで」といわれる。 　東京都立大学の中林一樹名誉教授は「地震のときはいくら119番に電話してもつながらない。つながっても消防車はすぐには来られない。火元にいる人はすべて、初期消火に全力を注いでほしい」と話す。 　家庭用消火器が機能するのは粉末タイプで約15秒、強化液タイプで約30秒から1分強だ。「火事だ」と大声で近隣に知らせ応援を呼ぶことも重要だ。消火器がなければ、濡らしたバスタオルを火元に被せ水をかけることでも消火できるという。 　しかし、もちろん、炎が目の高さまで達したら、たちまち天井に届き、家全体に燃え広がる危険があるため、躊躇せずに逃げることが最優先となる。逃げる際には延焼している部屋のドアを閉めると、廊下に煙が流れず逃げる際にパニックになりにくい。マンションのドアは防火扉なので、必ず閉めて避難すること。隣室への延焼も防げる。 　建物の外に出た後は、いち早く避難場所に避難しよう。なぜなら、避難中に別の火災に巻き込まれる危険性があるからだ。火災は風下に向かって扇状に広がっていくため、逃げる方向は風下を避け、火災の横方向「風横」に出てから風上方向に逃げることが大事である。 　しかし、住宅やビルが密集した地域では遠くが見通せず、また同時多発なので風上が別の火災の風下になることが起こり得る。行く手に別の火災があると逃げ場を失うケースもある。 　大都市では早めの避難が何より重要なのだ。2016年12月に新潟県糸魚川市の市街地で147棟を焼いた大規模火災では、当初、風下側の地区公民館に避難していた住民が火災の拡大によって消防署の要請から安全な風上側の避難場所に集団で移動する二次避難が行われていた。 　中林名誉教授は「火災が拡がる最大の原因は、風が強い場合には特に離れたところに火の粉が飛び、新たな火災現場を作る『飛び火』の発生だ。避難場所に安全に行くために様々な避難ルートを知っておくことも大事」と警鐘を鳴らす。