老舗がまた一つ…江戸屋履物店、73年の歴史に幕 げた、草履はスリッパやサンダルに移ろっても「最高の一足との出合い大事に」
鹿児島市東千石町にぎわい通りの「江戸屋履物店」は、6日で73年の歴史に幕を下ろす。2代目店主の江野政義さん(74)と妻のまり子さん(69)は「感謝の気持ちでいっぱい。一人でも多くの人に最高の一足に出合ってもらえるよう、最終日まで頑張る」と話している。 【写真】〈関連〉「73年間ありがとうございました」という手書きの貼り紙の前で笑顔を見せる江野さん夫婦=3日、鹿児島市東千石町の江戸屋履物店
1951(昭和26)年、政義さんの父で初代店主の三雄さん=故人=が、名山堀で営んでいた店を現在地に移転した。店名は江戸(東京)の履物屋に憧れて付けたという。政義さんは大学卒業後に店を継ぎ、約50年間切り盛りしてきた。 げたと草履の専門店として始まり、高度経済成長期にはスリッパやサンダルを取り入れ、次第に種類を増やしていった。「どの品もまずは履きやすさ、次にデザイン。手頃な価格にもこだわってきた」と振り返る。 コロナ禍で天文館の人通りが減ったことや、インターネット通販の普及で、経営は厳しくなった。「和装を盛り上げるために踏ん張ってきたが、体力があるうちに引退しよう」と閉店を決めた。 3日正午、同店は別れを惜しむ人でにぎわった。げたを求めるすし職人や、修理に駆け込む客の姿も。店に約40年間通う平之町の堀之内久美子さん(73)は「いつも足に優しい靴を選んでくれて信頼できる店だった。閉店はショックだが、第二の人生を元気で頑張って」とエールを送った。
5、6日は午前11時~午後6時半に営業予定。
南日本新聞 | 鹿児島