石破首相「在庫一掃セール内閣」が残念すぎる…総選挙突入で懸念される「3つの不安」
● 「納得」も「共感」も得られていない 石破内閣の多難な船出 石破内閣の顔ぶれがほぼ固まった9月29日、自民党所属の衆議院議員から聞こえてきたのは以下のような言葉である。 「高市さんを支持した人たちが完全にパージされている」(自民党総裁選挙で高市早苗氏を支持した衆議院議員) 「かつて安倍元首相を『国賊』呼ばわりした村上誠一郎さんが総務相? 我々(旧安倍派)を敵に回すつもりか?」(旧安倍派衆議院議員) 筆者は個人的に、石破茂(67)という政治家について、裏表がない「いい人」だと思っている。もっとも、日々、永田町で、権力をいかにして手に入れ、それをどう行使するかに腐心している政治家に「いい人」など滅多に存在しないのだが、そんな中でも石破氏は稀有な存在だと感じてきた。 事実、在京ラジオ局時代、石破氏に出演依頼をして断られたことがない。どうにか都合をつけて、こちらの依頼に応じようとする人だ。 職場の打ち合わせスペースや喫煙室で話す政策論は熱を帯び、戦闘機や空母のプラモデル作りの話やキャンディーズに関する話を嬉々として語る姿は、テレビで見る石破氏と全く変わらない。 それだけに、5度目の挑戦でやっと手に入れた首相の椅子が、発足当初から「長続きしないのでは?」と危ぶまれている状況を極めて残念に思うのである。
● 人事のミスで生じる 政権基盤弱体化への不安 石破氏を取り巻く不安は3つある。 1つ目は、先に述べた自民党役員人事や閣僚人事でのミスだ。接戦で敗れた高市氏に幹事長ポストを提示しなかったこと、そして村上氏を総務相に起用した点は、その代表格である。 石破氏本人は、10月1日、首相就任後の記者会見で「納得と共感内閣」と命名して見せたが、少なくとも、自民党内で石破氏を支持した議員を除けば、「納得」も「共感」も得られていない。 「党内基盤が弱い」と言われた岸田文雄前首相(67)ですら、常に40人規模の岸田派(宏池会)を率いてきた。すでに消滅した旧石破派(水月会)はその半分にも満たない。 その中から、側近の赤沢亮生氏(63)を経済産業相に、平将明氏(57)をデジタル相に抜擢し、岩屋毅外相(67)のように石破氏を強く支持してきた議員で固めた人事は、「身びいきの在庫一掃セール内閣」と揶揄されても仕方あるまい。これらの人事は、ただでさえ脆弱な党内基盤をさらに弱体化させるきっかけを作ったと言っていいだろう。 石破氏による人事で評価できるのは、麻生太郎最高顧問(84)をはじめ党内外に太い人脈を持つ森山裕氏(79)を幹事長に据えたことと、外交防衛を担う重要ポストを、前述の岩屋外相や中谷元防衛相(66)という防衛相経験者でそろえた点くらいだ。