スケートの本場の危機…温暖化で次々と消える校庭リンク “五輪のスター選手”生み出してきた文化守るには
春先のような陽気 リンクの氷が解けて…
水鏡のようなリンクに、滑る子どもの姿が映る。1月6日の昼下がり。長野県にある屋外の人工リンク・茅野市国際スケートセンター(ナオ・アイス・オーバル)のスケート教室に出向くと、コースの所々に水が張っていた。この日の諏訪の最高気温は10・3度。春先のような陽気でリンクの表面が解けていた。 【写真】ナオ・アイス・オーバルで練習する子どもたち
「片足を5秒上げてバランスをとって滑ってみて」。指導役で市出身のスピードスケート元五輪選手の橋本(旧姓吉井)小百合さん(39)が優しく声をかける。すてんと尻もちをついた女子児童は「びしょびしょだ」。はにかみながら立ち上がり、元気よく滑りだした。
高地の長野県ならでは 冬場の校庭にリンク造る伝統
諏訪地域には、田んぼや校庭に天然リンクを造る伝統が根付き、競技の裾野を広げてきた。しかし、温暖化の影響や維持の負担感で次々と姿を消し、校庭リンクが残るのは茅野市の金沢、泉野両小学校と諏訪郡原村の原小学校だけ。八ケ岳山麓の標高約千メートルにある原小も今季は十分に氷が張らず、リンクを管理する村教育委員会の担当者は「1月半ばに気温が上がり、氷点下にならない日もあった」と嘆いた。
こうした状況で、ナオ・アイス・オーバルと、岡谷市やまびこ国際スケートセンターの屋外人工リンクはスケート文化を維持する上で存在感を増している。
1月30日夜、ナオ・アイス・オーバルで、原小学校スケートクラブが練習に励んでいた。クラブ員は数年前まで数人だったが、高価なスケート靴などをレンタル可能にするなど工夫を重ね、今季は32人も集まった。事務局の牛山真季さん(38)=原村=は「スケート場があるからできている」と強調する。
どうにかしてこの光景を守れないだろうか
茅野のスケート場には取材でよく足を運ぶ。子どもの楽しげな様子はほほ笑ましく、真剣に滑る姿は格好いい。人口減少と少子化、自治体財政の逼迫(ひっぱく)…。いずれも難題だ。どうにかして光景を守れないだろうか。(渡辺真康)
スケートリンク設備は老朽化
2018年平昌冬季五輪女子スピードスケート500メートル金メダリストの小平奈緒さん(茅野市出身)をはじめ、多くの五輪選手を輩出してきた諏訪地域。選手たちは1989年開設の茅野市国際スケートセンター(ナオ・アイス・オーバル)と94年開設の岡谷市やまびこ国際スケートセンターを拠点に技を磨いてきた。