内片輝監督が語る 叙述トリックの具現化という難問に挑んだ Huluオリジナル「十角館の殺人」
映画は医者のようなもの
池ノ辺 今回は配信ドラマですが、監督は映画のお仕事もされてますよね。監督にとってドラマそして映画とはなんですか。 内片 僕は、エンターテインメントとしての映画やドラマは、医者と同じじゃないかと思うことがあります。我々のやっていることって、ともすれば、「こんなの意味がないんじゃないか」「何か生産性があるのか」とチラッと思うこともあるわけです。「ドラマ・映画がなくたって人は生きていける」的な。でも同時に「作品を観ることによって救われる人は絶対にいる」とも思うんです。それは、若い役者さんたち、若い演出家にもよく伝えています。 これは極端な例になりますが、ある役者さんがすごく落ち込んで、生きることも辛いというところまで追い込まれてしまった時があったそうです。でも、「その時に、内片組の作品にもう一度出たいという想いがあったから、私は頑張ってこられたんです」と言われたことがあった。自分自身が作品を撮り続けることが、誰かの救いになる、それによって生きたいと思える。それはお医者さんが病気になった人を治すのと一緒じゃないかと、そんなふうに思ったんです。自分の作品を観て、「面白かった!さあ、寝よう」「明日も頑張ろう」、そんなふうに良い気分になれたら、それだけでもう「やりがいのある仕事や」と思うし、そう思ってくれる人をたくさん作れるものが、映画とかドラマなんじゃないかと思っています。 池ノ辺 本当に、その通りですね。
インタビュー / 池ノ辺直子 文・構成 / 佐々木尚絵