「見に来て」と地元住民が切実に…ルポ・能登半島地震「焦土の輪島で奇跡的に焼け残った」まれケーキ
瓦礫や錆びた金属片が無数に残るモノクロの焦土に、そのオブジェクトは鮮やかな彩りを与えていた。 「見に来て」と地元民が切実に…能登半島地震で焼け残った「奇跡のまれケーキ」写真 石川県輪島市の朝市。1月1日に起きた能登半島地震で大火災が起き、200棟以上の建物が焼失した場所だ。火災現場で奇跡的に焼け残ったのが、地元で「まれケーキ」と呼ばれ愛されるオブジェである。 「輪島市は、’15年上半期に放送されたNHK連続テレビ小説『まれ』の舞台です。パティシエを夢見るヒロイン(土屋太鳳)が、市の職員として働きながら成長していく物語。放送を記念し朝市には記念館が建てられました。記念館は能登半島地震による猛火で焼けてしまいましたが、建物の前にあるケーキのオブジェは焼失を免れたんです。SNSなどで〈奇跡のケーキ〉と話題になり、地元の人たちを勇気づけています」(現地を取材した全国紙記者) 記者が現地を訪れると、確かに「いろは橋」の近くに「まれ」と赤字で書かれたケーキのオブジェがあった。いちごやクリームのデコレーションが飾られ、可愛らしい印象を受ける。 ◆被災地でも復興状況に差 自宅が焼けてしまったという地元の女性が呼びかける。 「朝市は変わり果てた姿になってしまいましたが……。『まれケーキ』だけでも残ってくれて良かったです。ぜひ見に来てください」 3月16日に北陸新幹線の金沢・敦賀間が延伸開業し、能登半島の観光業を支援するための「北陸応援割」も始まった。だが被害の大きかった地域は、まだまだ旅行者を受け入れる態勢が整っていない。 輪島市の次に七尾市の和倉温泉を訪ねると、断水のため浴槽にはお湯が入っておらず立ち並ぶホテルの外壁にはいくつもの亀裂が。芝生の広場には地割れが残り、展望台のデッキは崩壊し「立ち入り禁止」だった。 石川県の観光担当職員が肩を落とす。 「(被害の少なかった)福井や富山、(石川南部の)加賀温泉はお客さんを受け入れられますが、現時点で和倉は復興に程遠い状態です。被災し被害が大きかったところに旅行客が来れないのでは、『北陸応援割』の経済効果はあまり期待できません。危険な場所が多く、観光地や景勝地には寄ることもできないんです」 苦境が続く能登半島の被災地。「まれケーキ」に勇気づけられた地元女性の「見に来てください」という切実な言葉が胸に響く。 取材・文・PH0TO:川柳まさ裕
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