『推しの子』がヒット作になった勝因は何?──原作漫画の完結に寄せて
“本筋”の復讐劇に関わらない人気ヒロイン・有馬かな
象徴的なのは、本作のメインヒロインのひとりにして人気キャラクターである、“重曹ちゃん”こと有馬かなの物語上における役割だろう。 元・天才子役という過去を持ち、(新生)B小町のメンバー、そして星野アクアに好意を寄せている有馬かなは、芸能モノとしての『【推しの子】』にも、ラブコメディとしての『【推しの子】』にも欠かせない存在である。 しかし実は彼女、“復讐劇”というメインプロットには、ほとんどと言っていいほど関わってこない。 「あんたの推しの子に、なってやる」と、作品タイトルにかけられた(=『【推しの子】』という物語におけるキーパーソンとも思える)発言をするにも関わらず。 逆に言えば、『【推しの子】』では、復讐劇というメインプロットを抜きにしても、芸能モノやラブコメディというサブプロットだけでストーリーを十二分に魅せることができている。 復讐譚としても、芸能モノとしても、ラブコメディとしても読める。 この他ジャンルの共存を実現できたことこそ──言うまでもなく並大抵のことではない──が『【推しの子】』が老若男女に届きうる力を持つポップな作品になった要因だと筆者は思う。
都築 陵佑