米国の恐怖指数が上昇中、多くの投資家のコア資産である「S&P500」はどうなる?
米国の代表的な株価指数である「S&P500」を対象としたオプション取引のボラティリティ(変動率)を基に算出している「VIX(Volatility Index)」が4月15日に20の大台に近づいた。清算値19.23は、2023年10月末以来の水準になる。「VIX」は「恐怖指数」ともいわれる通り、数値が高くなると株価が下落してきた。株価が低迷していた2022年の「VIX」は30を超えるような場面もあったが、株価が安定的に上昇し始めた2023年11月以降は15以下の水準で推移してきた。それが、久しぶりに20超をうかがうような水準に上昇してきた。現在の株式投資の中心は米国株であり、中でも「S&P500」は「コア(核)」といえる存在だ。その行方について、注意を払っておきたい。
4月15日に「VIX」が跳ね上がった理由と考えられているのは、当日発表された米3月の小売売上高が前月比プラス0.7%と予想のプラス0.3%を上回り、2月分も前月比プラス0.6%からプラス0.9%に上方修正されるなど、想定以上に強い消費を示す数値になったためだ。これによって、米国の利下げ期待が後退し、米国10年国債利回りは4.6%を超えた。この10年国債利回り4.6%超えの水準は、昨年11月以来のことで、当時は、インフレ率が高止まりし、FRBのパウエル議長は追加利上げの可能性をすら示唆し、米10年国債利回りは2007年以来の5%に接近するほどに上昇していた。現在のところ、米10年国債利回りは5%の水準には遠いものの、ジワジワと利回り水準が上がっていることは、「利下げ」をある程度織り込んでいた米国株式市場の先行きを不透明なものにしている。
2024年の米国株式市場は、3月FOMCでの利下げを開始し、年間で1.5%の利下げが実施されるとの見通しでスタートした。ところが、その後の米国経済指標は、インフレの高止まりと堅調な景気を示すデータが続き、結果として、CMEの「FedWatch」による6月に0.25%の利下げが実施される見通しは23.1%の水準に低下してしまっている。76.9%が「現状維持」の見通しになっている。7月末でも「現状維持」が52.6%で、0.25%の利下げが39.6%であり、利下げ開始は9月以降にずれ込むのではないかという見方になっている。「FedWatch」の数値は、経済指標やFOMCメンバーの発言などを受けて敏感に動くものであるから、その現在の数値が米国の金利の行方を決定的に示しているというものではない。ただ、遅くとも6月には利下げに動くと想定されていた米FRBの政策変更については、変更時期が後ろ倒しになっている。また、年間の利下げ幅についても縮小する見方が強まっている。