役所広司 メン・オブ・ザ・イヤー・レジェンダリー・アクター賞 ──芸歴45年のベテラン俳優、パーフェクトな日常
俳優の役所広司は、12月22日公開の映画『PERFECT DAYS(パーフェクト・デイズ)』で第76回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞に輝いた。長年の俳優としての功績を讃えて、「レジェンダリー・アクター賞」を贈る。 【写真を見る】役所広司、67歳の色気がすごい!
100年後に映画という文化が残っているとするならば、世界のどこかで『PERFECT DAYS』を観ている人がいるはずだ。その人は、日本に役所広司という俳優がいて、ドイツ人のヴィム・ヴェンダースという監督とこの映画を作り上げたことにきっと感謝するだろう。100年前の令和と呼ばれた時代の日本の景色、そこに生きる人間の切なさとおかしみ、そして美しさを映し出している。 「撮影が終わり、すべてがつながった作品として観たとき、平山(役所演じる主人公)が生きていると思いました。僕は台本を読んだとき、平山には静かで穏やかな修行僧のような人間をイメージしていたのですが、監督は『もっと笑ってくれ、もっと怒ってくれ』という演出でした。完成した作品を観て、監督が平山をどのように解釈していたのか、深く理解できましたね」 平山は東京・渋谷区の公共トイレの清掃員。映画はドキュメンタリーのように彼の淡々とした日常を追いかける。大きな事件はない。ほんのりとした恋のようなものはあるが、ラブシー ンと呼べるようなものはない。もっと言うならば、セリフも極端に少ない。 「監督がよく言っていたのは『平山みたいに生きたい』ということ。平山は都会に生きているのですが、彼だけ静かな森の中にいるようにゆったりとした時間を過ごしていて、1日1日を満足しながら生きている。僕も含めて、都会にいると、あれが欲しい、これが欲しい、そのためにはこれだけお金が要る、なんてことを思いながら生きているじゃないですか。平山はそうじゃない。日の出とともに起きて、働いて、銭湯で汗を流して、いつもの店で一杯飲んで、夜になったら寝る。それを羨ましいと感じる監督の気持ちはすごくよくわかります」 役所はこの映画の演技でカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を獲得した。 「まさかと思っていたので、名前を呼ばれてびっくりしましたが、まわりを見たら監督が泣いているんですよ。カメラマンのフランツ(・ラスティグ)も泣いている。あとで聞いたのですが、監督は『役所に男優賞を獲らせたい』と言 ってくれていたみたいです。狭いトイレに3人でこもって撮影していましたからね(笑)。自分の受賞はもちろんですが、彼らが喜んでくれたことの方が嬉しかったですね」