<第94回選抜高校野球>センバツ21世紀枠 候補校紹介/1 札幌国際情報(北海道) 自立、自律 まず人間力
3月18日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)に出場する32校が1月28日の選考委員会で決定する。学業と部活動の両立や困難な環境の克服などの要素を選考条件に加えた「21世紀枠」は、3校が選出される。全国9地区の候補校の取り組みを紹介する。 自立かつ自律。道立校である札幌国際情報の野球を端的に表現するなら、この言葉がふさわしい。就任から10年以上が経過した有倉雅史監督はかつて日本ハムなどでプレーした元プロ野球の投手だが、重視するのは技術よりむしろ「人間力」。日常から各自が最適な行動を取れるような指導を心がけ、成熟した集団を作り上げてきた。 札幌国際情報には室内練習場がない。冬季は屋根付き駐輪場の一角を使い、雪や風が入らないようにベニヤ板などで囲って打撃練習を行う。2021年末、記者が訪れると、この一角の入り口近くにいた白土峻太郎(2年)が即座に全体の練習を止めた。「こんにちは」の大音声とともに選手たちは深々と頭を下げた後、また一斉に打ち込みに戻った。 白土は主将ではないが、自然とリーダーシップを取った。「いつも周りに目を配っているので」と白土が話せば、有倉監督も「普段通りのこと」。用具の準備、片付け、清掃なども各選手が常に先回りして行う。成熟した集団であることを示す一例だ。 21年は新型コロナウイルス流行の影響を色濃く受けた。札幌地区の道立校は道内でも特に活動制限が厳しく、札幌国際情報も約4カ月間にわたる対外試合禁止期間があり、平日の放課後の練習も1時間程度に限られた。だが、昨秋の北海道大会では本来のエースだった小泉太陽(2年)が腰痛で離脱する逆境があったものの、右横手投げの三浦隼太郎(2年)がスライダーやカーブを駆使して奮闘。分厚い選手層を生かして、4強進出を果たした。 文武両道で年間100人以上が国公立大学へ進学するが、力のある選手が、市内のみならず全道から集まる。現在の部員数は2学年で60人。大所帯ゆえに練習場所が足りなくなり、冬場の日没後は校長室の窓から漏れる明かりを頼りに、素振りを繰り返す姿も見られる。阿部穣(みのる)校長(60)は「本当はカーテンを閉めたほうが仕事がしやすいんだけど、少しでも明るいようにして机に向かっている」と笑う。 限られた環境でも、できることを見つけ、努力するナインたち。北の大地で夢がかなう瞬間を待ち望んでいる。【岸本悠、写真も】=つづく ……………………………………………………………………………………………………… ◇札幌国際情報 1995年創立の道立校で野球部も同じ年に創部。昨夏の南北海道大会で4強進出を果たすなど近年、力を伸ばしている。甲子園出場経験はない。主なOBはサッカー・J1福岡の奈良竜樹ら。