話題作『SHUT UP』で顕著に…平成以降のドラマで「女性の友情」が強固になった“深すぎるワケ”
話題のドラマ『SHUT UP』(テレビ東京系)が、1月29日に最終回を迎える。同じ学生寮に住む田島由希(仁村紗和・29 )、川田恵(莉子・21)、工藤しおり(片山友希・27)、浅井紗奈(渡邉美穂・23)の4人に降りかかる、様々な事件を追う本作。学生の貧困事情や格差、そして今、メディアでさかんに取り沙汰されている“性行為の同意”というテーマも取り扱っている。 【画像】すごい…!黒木華「カラフルなスカート姿」でムロツヨシのマンションへ…… 物語の中で注目したのは4人の女性たちの固い友情だ。ドラマ序盤、恵が同意のない性行為によって妊娠してしまう。彼女の中絶費用を捻出するため、3人はパパ活や犯罪(恵を妊娠させて逃げた男性から現金を奪う行為)に手を染める。ほかにも、紗奈がネットワークビジネスに加担したと知れば由希が必死に止めるなど、友情を感じさせるシーンが随所に散りばめられていた。 これまでのドラマでは「女の友情はもろい」「男同士の友情は熱い」という、ステレオタイプな描かれ方をされることが多かった。何かに悩む女性が登場しても、実家の太さ、パートナー、出産、子どもの進学先など、取り上げられるのは本人以外のディテールばかり。これらの要素を女友達同士が比較しあう……という場面も。あながち間違ってはいないけれど、令和には少し古いのではないか。なぜなら、女性の友情は平成と比べて、強固なものになっていると、感じるからだ。 そんな女性の友情の変遷を、テレビドラマを通して、振り返りたい。 ◆窮屈だった、平成の女性たちの生き方 まず女性の生き方について、古い傾向から探ろう。 中森明菜(58)の出演で話題になった、月9『素顔のままで』(フジテレビ系・1992年)。生まれも育ちのまったく違うふたりの女性に友情が生まれる。ただ、結局は “友情よりも愛情”で、香坂優美子(安田成美・57)は結婚、出産、離婚を経て不治の病が発覚。残された月島カンナ(中森)が彼女の子を育てるという物語だ。最終的には友情の固さを感じさせるけれど、そこに至るまでは男女のすったもんだの応酬が多かった。結婚して子どもを授かることが最良とされてきた、当時の時代背景が滲み出ている。 ’08年放送『Around40 ~注文の多いオンナたち~』(TBS系)は、医師で独身のキャリア女性、既婚子なしの編集者、既婚子ありで社会復帰したばかりのアラフォー女性たちが登場。生活環境の違う3人は、お互いを羨望の眼差しと、悔しさの視点で比較し合う。ここでも最終的に彼女たちが求めたのは、子どもがいる豊かな暮らしだった。 『私が恋愛できない理由』(フジテレビ系・’11年)は、20代の女性3人による”ひとつ屋根の下”暮らしをベースに、それぞれが結婚を夢見て恋愛に奮闘する姿を描く。この作品でも、女性の生き方の選択肢の一番目にあるのは“結婚”だった。 ◆『ブラッシュアップライフ』がもたらしたものとは? 3作品を経て、平成が終盤に差し掛かり始めた頃。女性たちの友情に、少しだけ変化の兆しが見えるようになる。 「凪のお暇」(TBS系・’19年)では、主人公の凪(黒木華・33)が会社員生活、結婚、天然パーマを伸ばして作り上げた清楚な見た目、生き方、そして彼氏や毒親もすべて捨てる。人生のリセットだ。ここで凪が捨てたもののひとつに、同僚との偽装友情があった。社内では同僚と適当に話を合わせて、自宅に帰るとInstagramに「いいね!」の反応をする。「反応をしなかったら、明日から嫌われるかも……」という凪の強迫観念が描かれていた。 だが、すべてを捨てた凪は行き着いたアパートで、新しい友情を育てる。そのままの凪を受け入れてくれる住人や、友人とのやりとりは、見ていて心温まるものだった。 女の友情には不快感も、打算もない。相手がどういう生き方をしていようが、関係ない。ただ相手がピンチのときに手を差し伸べる…という女の友情を決定的にしたのが、『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系・’23年)だ。 不慮の死を遂げた近藤麻美(安藤サクラ・37)が、何度も人生をやり直すという物語。そのたびに麻美は人生=職業のグレードを上げていく。最終的には、幼なじみふたりを航空機事故から守るため、同じくやり直し組の宇野真里(水川あさみ・40)とパイロットになる道を選ぶ。そして大切な友人ふたりを事故から逃すことに成功するのだ。本作には結婚、出産、そしてお互いの立場を比較するような描写は一切ない。最終的に女4人で老人ホームへ入居して、楽しそうにしているシーンでドラマは終わる。何よりも固い友情だけがそこにあった。 平成から見てきたドラマの数々には、定番だったはずの女性の生き方があった。でもその価値観はもう終わりだ。性別に関係なく、それぞれが自分の特性を生かして生きる時代となった。そんな情勢を背負いながら、ドラマに登場する女性たちは、これからどんなふうに生きていくのだろうか。 取材・文:小林久乃 小林久乃(こばやし・ひさの)/エッセイ、コラムの執筆、編集、ライター、プロモーション業など。著書に『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ)、『45センチの距離感 つながる機能が増えた世の中の人間関係について』(WAVE出版)、『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社)がある。静岡県浜松市出身。X(旧Twitter):@hisano_k
FRIDAYデジタル