利回りマウント、元本7割保障etc. 投資詐欺にひっかからないためには「投資の常套手段を知れ」
ディテールから、投資詐欺の常とう手段を知る
まるで消費者保護を訴える政府のパンフレットから抜粋したかのような、典型的な詐欺です。大変よい事例なので、「逐条的」に解説しましょう。詐欺の手口の本質を知るにはディテールを押さえるのが一番ですから。 ・「今の給料だけでは、君の人生にかかるお金をまかなうことはできないよ。億単位で足りない」。埼玉県の会社員男性(27)は2019年10月、知人の紹介で知り合った外資系保険会社員の男にそう言われた。 ↓ 人生に必要なお金を計算させ、いまの年収と比較。これ詐欺師の典型的なセットアップです。ネタとして利用されるのがロバート・キヨサキの著作『金持ち父さん貧乏父さん』(筑摩書房)やそれのゲーム版の『キャッシュフロー』などです。 これらの媒体を使って、理想と現実とのギャップを意識させたうえで、不足している金額を自分で計算させます。 ・男性は当時、社会人2年目で、金融機関で働いていたが、営業ノルマを達成できず職場にもなじめなかった。年収は手取りで約300万円。「投資や副業をやってみたいと考えながら、何も行動できていなかった」と振り返る。 ↓ この考えは基本的には正しい。確かに金融機関で働いても将来的な収入は知れています。だからリスクを取って稼ぎたい。ここまでは正しい。
稼ぐための手段として本当に適切か?
しかし、問題はその次です。稼ぐための手段としてこの詐欺商品が適切かどうかよーく考えてみないとダメでしたね。詐欺師は最初からソリューションスペースを狭めて選択を迫ります。その場で決断をせず、セカンドオピニオンも参照すべきでした。 ・「投資で稼いだ金で高級腕時計を毎月買い替えている」「年収は1000万円を軽く超える」。男の言葉は魅力的だった。海外の投資事情など自分の知らない世界を広げてくれる存在で、「先生」と慕うようになった。 ↓ 高級腕時計、年収1000万円……若い人にとっては非常にわかりやすい「利回りマウント」です。私の知り合いにも600万円の時計を見せびらかしている怪しい団体職員がいるんですが、こういうのとは距離を取るようにしています。間違いなくそういう人は危ない。その時計は借金の塊かもしれない。なんでも素直に信じちゃダメ!! ・投資コンサルティング会社「フリッチクエスト」(東京)への投資だった。海外で資金を運用するとして、「月利4%で元本も7割保証される」と勧誘された。 ↓ はい、出ました! 「利回りマウント」と呼ばれるテクニックです。仮にこの被害者がインデックス投資などまともな投資をしていた場合でも、「え? そんな利回りで満足なんですか?」「うちだったら軽く月利4%で回りますよ」とマウントを取ってくるわけです。