完封勝利の森保Jで光った19歳の最終ライン冨安健洋
おもむろに手を叩いた。それも激しく、自分自身への怒りを込めるかのように表情を歪ませながら。数秒前に犯したミスを、センターバックの冨安健洋(シントトロイデンVV)は許せなかった。 「あれは(自分への)戒めというか、悔しさですね。やったぞ、という達成感ではないです」 パナマ代表とデンカビッグスワンスタジアムで対峙した、12日のキリンチャレンジカップ2018。日本代表が1点をリードして迎えた後半18分に、念願のA代表デビューを先発で飾っていた、東京五輪世代でもある19歳のホープが肝を冷やすシーンが訪れた。 右サイドバックの室屋成(FC東京)からのリターンパスを自陣で受けようとした際に、相手に詰められてボールを失った。チームメイトの誰もが想定していなかった不用意なミス。すかさずパナマが電光石火のショートカウンターを仕掛ける。ドリブルで日本ゴールに迫る相手との距離を必死に詰め、ともに戻ってきた室屋と挟み込む形でかろうじて阻止した直後に冒頭の仕草が飛び出した。 攻めてはMF南野拓実(ザルツブルク)とMF伊東純也(柏レイソル)が、9月のコスタリカ代表戦に続くゴールをゲット。さらに相手のオウンゴールでダメを押し、守っては2試合連続のクリーンシートを達成する。 勝利を告げるホイッスルをピッチ上で聞いた冨安は、胸中に手応えと課題とを同居させていた。 「無失点に抑えて勝つことができてホッとした部分はありますけど、勝ったからこそポジティブに反省することもできる。細かいミスもありましたし、決してパーフェクトなゲームでもなかったので、映像を見直しながら反省して次に生かしていきたい」 キックオフの笛が鳴り響いた瞬間に、19歳と341日の冨安が日本代表の歴史に新たな1ページを刻み込んだ。2012年のFW宮市亮(現ザンクトパウリ)以来となる、十代での国際Aマッチデビュー。しかも、何よりも経験が必要とされるセンターバックでは史上初となる。 「なぜなのかはわからないんですけど、試合が始まる前までは緊張しているのかどうかもわからないほどボーッとしていて。いままでにない感覚で、本当に不安しかなかったんですけど、いざ始まってみると意外にもすんなりと試合に入れたし、思っていたより体も動いたのでホッとしました」