「文榮堂」本店 75年の歴史に幕 閉店惜しむ声も【山口】
山口市道場門前1丁目の書店「文榮堂」本店が30日、75年の歴史に幕を閉じた。最終日には多くの客が訪れ、思い出の店に別れを告げた。 同店は1949年9月に開店。中心商店街にあり、2階建てで政府刊行物や教科書を扱い、岩波書店の書籍を多数そろえていた。コロナ禍もあり、電子書籍の利用拡大や購入方法が通販に変わったことなどを背景に売り上げが落ち込んだことから閉店を決めた。 20年以上勤める店員の矢次恵さんは「『おかえり』と出迎えるようなアットホームな店。勤め始めた頃と比べ、近年は来客が減っていると感じていた。閉店はまだ実感が湧かない」と話した。 近くに住む服部敦子さん(46)と花蓮さん(18)は親子でひいきにしていた。敦子さんは「高校時代に友達と参考書を買いに訪れた。娘が生まれてからは絵本を買いに通った」、花蓮さんは「買ってもらった絵本や、はやりの作家の作品など本にまつわる思い出でいっぱい」と閉店を惜しんでいた。 最後の閉店時間を迎え、店前で矢次さんらスタッフが「それでは閉店します。長い間ありがとうございました」と感謝の言葉を述べて頭を下げると、見届けた客から温かな拍手が送られた。 山口大学前店は10日で書籍と文房具の販売を終えるが、本店の外商部機能を集約し、今月下旬にホビーショップ「駿河屋」としてリニューアルオープンする。阿知須のサンパークあじす店と大内千坊6丁目のゆめタウン山口店では、引き続き一般書籍を扱う。