新境地開拓のグッチからマッツ・ミケルセン登場のゼニアまで、2025年春夏ミラノ・メンズコレクションをプレイバック!
2025年春夏のミラノ・メンズコレクションを訪れたエディターが、私的ベストルックとともにショーを振り返る。 【写真の記事を読む】ベストルックを見る。
MSGM ミラノ・メンズで最初に訪れたのは、2日目にあたる6月15日(伊現地時間)に開催されたMSGMのショー。今回は、ブランド創業15周年を記念し、メンズ2025年春夏コレクション、およびウィメンズ2025年リゾートコレクションを合同で発表した。「the sea and I.(=海と私。)」がテーマで、マッシモ・ジョルジェッティらしい鮮やかなカラーリングの、夏らしい開襟シャツやボクサーパンツ風のショーツなどがランウェイを彩った。中でも花柄の開襟シャツにマルチカラーのボーダートップスをレイヤードし、ミニ丈のショーツを合わせたルックは、暑い季節を楽しく盛り上げてくれそう。 Dolce&Gabbana ドルチェ&ガッバーナは、「ITALIAN BEAUTY」というタイトルの通り、ブランドが誇るイタリアの優れた職人技を前面に押し出した。ファーストルックの天然繊維であるラフィアを編んだブルゾンは、手仕事で時間をかけて作られたラグジュアリーな逸品だ。確固たるテーラリング技術による計算しつくされたリラックスシルエットと、1900年代に活躍したイタリアの作曲家たちの楽曲を用いた小気味良いサウンドトラックが、“イタリアの美しさ”を強調する。 FENDI 『GQ JAPAN』では既報だが、プレッピーとトレンドのひとつであるバレエコアのエッセンスが目立つ。ミラノ・メンズ期間中に観た、他のブランドのシックないしは彩度の高いカラーパレットとは一線を画す、パステルトーンやタータンチェックづかいに心を奪われた。シャツをタックインし、レジメンタルタイを締め、ジャケットを羽織るトラディショナルなスタイルに、バレエシューズ調のフットウェアを履いてハズすのは、すぐにでも真似したい。 Emporio Armani 会場の壁に、数頭の馬が駆ける様子が映し出されるとともにショーが開幕。スーツやシャツを軸としたリラックス感漂う夏のワードローブに、カウボーイ調のストローハットや馬具を彷ふつとさせるベルトやハーネスのような小物が取り入れられた。後半にムードは一変し、壁いっぱいにラベンダー畑が投影され、最後の6ルックでは、上裸のメンズルックとともにウィメンズのルックも登場し、フィナーレを迎えた。個人的には、“カウボーイコア”な夏の着こなしに注目しているので、ウエスタンハットとロングブーツを合わせているのにも関わらず清涼感のある、このルックに惹かれた。 MAGLIANO 2016年にスタートしたマリアーノは、今やイタリアの若手デザイナーズブランドを代表する存在だ。タオル地のコート、トップスの裾やパンツのウエスト部分の折り返し、ウエストマークの位置を落としたジャンプスーツ、そしてレーシングカーシューズなど、ユニークなアイテムは多数もあるものの、テーラードやワークウェアを中心としたリアリティのある構成だ。プレスリリースの最後にある「⻄洋⽂化において、装いは⾝体に従属し、⾝体は社会慣習に従属しています。もし⾝体が従属しなければ、服もまた従属しなくなるのです」という一説は、あくまでも“日常着”にフォーカスし、そこに独自のアクセントを効かせるマリアーノらしい。ファーストルックのラフなジャケットスタイルには、是非ともトライしてみたい。 PRADA ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズによる最新コレクションでは、袖丈が足りないように見えるニットやスプリングコートをはじめ、袖と丈が極端に短いタイトなカーディガン、クシャクシャにシワ加工が施されたジャケットなど独特なディテールのアイテムが登場し、タンスにしまい込んである家族の古い服をそのまま着てきたかのような雰囲気を醸す。「CLOSER」をテーマに掲げ、近づくと見え方が変わるトロンプルイユがデザインに用いられているのも特徴。そして、ランウェイの奥の小屋から姿を現したミウッチャとラフのフィナーレの挨拶の様子は、いつになくチャーミングだったので要チェックだ。 DUNHILL 英国流の着こなしを探求するダンヒルの2025年春夏は、ヘリンボーンやウィンドーペーン、そしてグレンチェックといった古典的な英国柄のスーツやピューター製のドッグ・ヘッド・ハンドルを用いたラグジュアリーな傘などにフォーカスし、クラシック回帰を強調した。チーフ・クリエイティブ・オフィサー、サイモン・ホロウェイは「これはオフィスに行くためのベーシックな服ではありません。人生を楽しむための服なのです」と語る通り、英国紳士的なルックを纏えば、日々の暮らしに彩りを与えてくれるかもしれない。 JW ANDERSON JW アンダーソンは、これまでと同じく服のあらたなフォルムを追求した。今シーズンは、後身頃の着丈が長いビッグサイズのベスト、膨らんだ風船のようなパーツが付いたトップス、肩のパーツが強調されたブルゾン、斜めに切れ込みの入ったマシュマロのようなプルオーバー、そして巨大化したネクタイなど、独創的なバランスのアイテムがラインナップ。新鮮に映ったウェアの中でも、特にこの巨大なアウターには一度袖を通してみたい。また、ビールブランドのギネスとのコラボレーションも披露され、注目を集めた。 Giorgio Armani ショーがはじまると壁一面にヤシの木の映像が流れ、真夏のビーチでリラックスしているかのようなムードが漂う。そして、その雰囲気に誘われて、ヤシの木や葉がプリントされた涼しげなルックが会場に映えた。全92ルックという大ボリュームの中で、ゆっくりとカラートーンが変化していくのも印象深い。また、フロントローには、片寄涼太と土屋太鳳夫婦が来場し、日本国内で大きな脚光を浴びた。 GUCCI クリエイティブ・ディレクター、サバト・デ・サルノによるグッチのファーストシーズンは、控えめな装飾の少ないデザインが話題を呼んだが、2度目の今回は夏らしいポップなカラーとスパンコールやビーズのフリンジといった華やかなディテールが際立った。このルックのフラワープリントのシャツは、フリンジのトリムと花の刺しゅう入りアップリケがポイント。あらたな一面を覗かせたグッチの今後に注目したい。 ZEGNA 2025年春夏ミラノ・メンズのフィジカルショーのラストは、ゼニア。ミラノ市内の外れにある廃棄された工業用施設内のランウェイには、リネンを模した金属が生い茂る。アーティスティック・ディレクターのアレッサンドロ・サルトリはリネンに焦点を当て、軽やかなコレクションを展開した。ランウェイの最後にアイコニックなイルコンテジャケットをまとった俳優のマッツ・ミケルセンが登場し、ミラノ・ファッションウィークの大トリとしてショーを盛り上げた。
文・近藤玲央名 写真・Gorunway.com