戦力外リストに入っていた男が阪神の危機を救う
岩田のハートの裏にあるのは、この世界での生き残りをかけた切実な危機感だろう。 岩田はつい2か月前まで今オフの戦力外リストに入っていた。33歳。オリックスからFAで糸井を獲得した際の人的補償のプロテクトから岩田の名前は外れていた。オリックスは年齢面を考慮し岩田を指名せずに金田を獲得したが、事実上の戦力外である。 昨季は、開幕からローテーションに入ったが、4試合で0勝3敗、防御率7.11と結果を出せず2軍落ち、9月に中継ぎ起用されたが、6試合、0勝3敗、防御率8.85の成績に終わっていた。 今季も1軍キャンプメンバーには選ばれたが、秋山、青柳の台頭で開幕メンバーから漏れ、長い2軍生活が続いていた。この7月下旬から6連戦が続くために、第6の先発の椅子が生まれたとき、当初、昇格候補は、島本か岩田かの選択だった。だが、島本に故障の不安があり、1軍が求めていたのは先発のポジションだったため、ファームの首脳陣は、怪我なく週に1度のローテーションを開幕から崩すことなく守り、防御率3.32と安定した成績を残していて、直近の試合でボールにキレが出ていた岩田を推薦した。戦力外リストに載っていた男のラストチャンスだったのである。 実は、昨年、阪神の余剰戦力となっていた左腕の岩田に目をつけた楽天が、トレードを画策したこともある。交渉は成立しなかったが、2度も阪神のユニホームを脱ぎかけた男が救世主となったのである。 これで676日ぶりの白星をマークした7月27日の横浜DeNA戦から、3試合続けてゲームを作った。今や立派なローテーション投手。メッセンジャーが離脱、秋山も大腿部の違和感で登録抹消中、岩貞も制球不安で2軍落ち。藤浪が16日の広島戦で復帰してくるが、崩壊の危険性のあるローテーションの中で、戦力外リストに入っていた岩田の存在が、頼りになってきた。