『ブラックペアン2』二宮和也が天城として初めて見せた表情 “父親”に反応した真意は?
ウエスギモーターズの会長・上杉(堺正章)のオペ、そして最先端医療AI“エルカノ”の進化系である“エルカノ・ダーウィン”という、物語を左右させる二つの大きなカギをめぐって東城大と維新大の争い――すなわち佐伯(内野聖陽)と菅井(段田安則)による全日本医学会会長の座をめぐる争いが激化しようとしていた前回。天城(二宮和也)の不在時に上杉が倒れ、その緊急手術を佐伯が執刀することになったのだが、“佐伯式”は行わずに中断。おそらく佐伯の“目”に、何らかの異変が生じているようだ。 【写真】副院長・江尻役で出演の大黒摩季 8月25日に放送された『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)の第7話で描かれる一連は、佐伯と菅井の“最終決戦”とでもいうべきだろうか。上杉会長の息子であるウエスギモーターズ社長の歳弘(城田優)が菅井と手を組み、同社の医療部門を独立させた新会社設立を目論む。それによって“エルカノ・ダーウィン”は利益を出すための道具に成り代わってしまうこととなり、エルカノによる遠隔治療に大きな期待をしていた治験コーディネーターの椎野(田中みな実)は懸念を示す。そして歳弘は天城に接触し、上杉会長よりも多額の報酬を条件にオペを失敗するよう要求。しかもそのオペが、会長選の場に生中継されることが決定するのである。 やはりドラマ後半戦は、天才医師たる天城の手腕が発揮されることよりも政治的な部分が強調されていくことが顕著になった今回のエピソード。もっぱら天城と世良(竹内涼真)は、上杉親子の対立(もちろんそこには維新大の謀略が加味されているが)に巻き込まれる格好となり、“公開手術”というドラマ前半部で何度も見せ場となった部分は継承されつつも、“シャンス・サンプル”は行われない。むしろ、これまでのように前にぐいぐいと出てくるのではなく一歩下がった位置に立つことで、まだ天城がミステリアスな存在であることを示しているかのようにも思える。 歳弘からの提案(ウエスギモーターズの株式の1%=500億円という巨額の報酬)に心が揺らいだように見せつつも、二箇所同時にダイレクト・アナストモーシスを行なう必要性をわざと作りだし、“エルカノ・ダーウィン”と佐伯との三者によってオペを成功へと導く。それは同時に“エルカノ・ダーウィン”の性能と遠隔治療の価値を証明し、開発段階のそれを起動することができる菅井と、まだ学習が不完全なダイレクト・アナストモーシスを補完できる佐伯が手を組むことを仕向ける役割も果たしている。 いずれにせよ、天城にとっては誰が会長になろうと関心がないのは明白である。しかし佐伯が会長になってスリジエハートセンターの設立が前に進むこと、“エルカノ・ダーウィン”で医療技術が進化することへの強い期待感を持っていることははっきり見て取れる。より多くの患者が救われるほうを選択するという天城の医師としての矜持。やはりその根底にある信念は、渡海と通じているのだろう。 無事に佐伯が会長選を勝利したことで、ひと段落したと思えた“政治的”な部分。ところが佐伯が医学会会長をしながら東城大病院の院長を続けるという野望を打ち出すことで、新院長の座のために佐伯に協力していた副院長の江尻(大黒摩季)との対立の気配――院内政治をめぐる熾烈な争いの勃発を予感させる。そして佐伯の異変も然り、上杉会長の「父親」という言葉に切なげな表情を浮かべた天城の過去も然り、ドラマ終盤戦にはまだまだ描かれるべき要素が山積みである。
久保田和馬