初期宇宙には “色付きブラックホール” が存在した? 暗黒物質探索の思わぬ副産物
■思わぬ副産物「色荷ブラックホール」の発見
Alonso-Monsalve氏とKaiser氏の研究チームは、初期宇宙の環境条件を考慮した理論計算を行い、原始ブラックホールが生成される過程を考察しました。 研究チームが注目したのは、宇宙誕生からわずか100京分の1秒後(0.000000000000000001秒後)の時点です。この頃の宇宙には原子はおろか原子核さえ存在しません。原子核を構成する陽子や中性子は「クォーク」および「グルーオン」という2種類の素粒子で作られていますが、2兆℃を超えると陽子や中性子という “固体” の状態から、クォークとグルーオンが混ざりあった、ある種の “液体” の状態となります(※2)。これを「クォーク・グルーオン・プラズマ」と呼びます。 ※2…固体から液体という表現は、本記事においては相変化に例えた表現ではありますが、別の文脈ではクォーク・グルーオン・プラズマ自体が “液体” と表現されることもあります。これは、素粒子同士の相互作用が強い流体であるためです。 宇宙誕生から100京分の1秒後の宇宙の温度は、100京から1垓℃という超高温だったため、宇宙はクォーク・グルーオン・プラズマで満たされていました。ここで重要なのは、クォークとグルーオンは電荷に似た「色荷」と呼ばれる性質によって、お互いに引き合っていたという点です。 色荷という名称は、6種類の値で表される性質を光の三原色で表現することに由来しています。実際にはクォークにもグルーオンにも色はついていませんが、色荷はクォークとグルーオンの振る舞いを表現する上で重要な性質です。例えば、陽子や中性子のようにクォークやグルーオンでできた粒子は、色荷の合計が “無色” (または “白色”)となる組み合わせのみが安定であることが分かっています。一方で、2兆℃を超える環境では、クォークやグルーオンの組み合わせは “無色” 以外も許されるため、低温環境とは全く異なる振る舞いを示します。