中国が政治的威圧や偽情報拡散で総統選に介入 台湾、情報の即時訂正体制で防衛図る
(台北中央社)総統選の投開票が来週末に迫り、与野党の攻防が激化する中、中国による選挙への介入に検察は捜査のメスを入れている。鄭文燦(ていぶんさん)行政院副院長(副首相)は5日までの中央社の単独インタビューに応じ、中国は経済的威圧や偽情報の拡散をはじめとした幅広い手段によって選挙への介入や浸透を図っているとし、先日の総統・副総統候補による政見発表会やテレビ討論会では各省庁がチェック体制を敷き、誤った情報があれば即座に報道資料を発表して訂正していたと明らかにした。 鄭氏は、中国の選挙介入手段は認知戦、経済的威圧、グレーゾーン軍事行動の常態化などに分けられると指摘。経済的威圧では、今月1日から台湾製の一部石油化学製品について、海峡両岸経済協力枠組み取り決め(ECFA)に基づく関税優遇措置の適用を停止した一方で、台湾の特定企業を対象に高級魚ハタの輸入を再開すると発表した。鄭氏はこれについて、政治的効果を得るための政治的操作だとの見方を示す。 この他、中国は低品質なコンテンツを大量に生産する「コンテンツファーム」によって偽情報を作り出し、SNS(交流サイト)を通じて毎日投下していると言及。SNSは拡散経路をたどることが可能であるため、多くの情報は対岸から発信されていると推測でき、内容は明らかに選挙に影響を与えることを意図しているとの見方を示した。また、旅行への招待や偽動画、人工知能(AI)を利用したディープフェイク動画なども介入や浸透を図る手段として使われていると紹介した。 中国は民主主義の開放性や多様性といったメリットを逆手に取り、これらを民主主義の弱点だと捉えていると鄭氏は指摘する。そのため、法整備の上では国家安全法や反浸透法をさらに強化させる他、メディアリテラシーの強化や選挙介入を阻止する方法の研究、市民討論などによって民主主義の自己防衛体制を強化する必要があるとの考えを示した。 (頼于榛/編集:名切千絵)