拝啓・石川雅規様【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第117回
続いて石川投手の強みその2。それは人間性の素晴らしさです。 ヤクルトOBの館山昌平さんとお仕事でご一緒した際に、石川投手のすごさを聞いたところ、「常に話題の中心にいること」とおっしゃっていました。石川選手の周りには自然と人が集まるんですって。それは、石川投手自身がみんなとコミュニケーションを取ろうとしているからです。 インタビューなどでも、決して自分を大きく見せようとしません。誰に対しても謙虚で、常にフラットに接する。親子くらい歳が離れた若手にも、積極的に話しかけにいくなど気を配る方なんだそうです。 23年前に、ドラフトの自由獲得枠でヤクルト入りした石川投手。「巨人入りが内定していた」という噂もありますが、結果的にヤクルトに入団しました。当時の自由獲得枠は、経済的に余裕のある球団が有利とされていて、予算が厳しいヤクルトは熱意と誠意で石川投手を獲得したとも聞きます。 スカウトさんは当時も、石川投手が精神的に安定していることを評価していたそうです。うなりを上げるような速球や、視界から消えるような変化球はなくても、調子に波がなく、マウンドで落ち着いているからピンチでも動じない。そんな投手はなかなかいないですよね。当時のスカウトさんの慧眼には恐れ入ります。 6月2日の勝利で、通算勝ち星は186勝に。名球界入りの目安となる200勝まであと14勝となりました。近いようで遠い数字ではありますが、私たちヤクルトファンは「いけそう」と思ってしまう。それはやはり、石川投手だから。 体は小さくても努力して、誰よりも長く現役を続ける。もはや"現代版『イソップ童話』"として教科書に載せたいくらいです。そんな偉人、石川投手に少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ次回の投球を見て、その雄姿を眼に焼きつけていただきたいです。 ちなみに石川投手とは、五十嵐亮太さん夫妻とも一緒に3家族でお食事をご一緒させていただいたことがあるのですが、この連載もたまに読んでくださっているということ。今回の記事も届くといいなあ。 次の登板のときは球場に足を運んで、背番号19をつけた大きな背中を応援したいと思います。それでは、また来週。 構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作