【100周年の聖地へ/聖光の挑戦】㊥ 磨いた「細やかさ」
第106回全国高校野球選手権福島大会で優勝した聖光学院は、バントなど小技を起点に「細やかな野球」を磨き上げて勝ち抜いた。昨年秋の東北大会で苦い経験があったからだった。 県大会では3連覇を果たした。続く東北大会で日大山形に敗れた。死球や失策、暴投を重ね、序盤に大量失点したまま力尽きた。攻撃では13安打を放ったが、好機を生かせず競り負けた。「自分たちは何をしに来たのか…」。グラウンドに泣き崩れる選手もいた。 秋の大会後、自分たちの未熟さに向き合おうと、選手一人一人が集まって大きな力を出すという思いを込め、小さな石を意味する「さざれ石」をスローガンに掲げた。選手同士の理解を深めて一体感をつくるため、2人一組の個別ミーティングを練習後に実施するなど部員独自の取り組みを続けた。 攻撃面の強化も大きな課題だった。歴代と比べて強打者が少ないことに加え、春から低反発バットが導入されて長打も減少。得点力を上げるために毎日1時間、バント練習に打ち込んだ。「一番時間をかけた」という努力が功を奏し、夏の県大会の全5戦で計24犠打を成功させ、優勝につなげた。
30日、選手は練習を再開した。「ナイスバッティング!」。打撃練習をする選手の大きな声が響く。笑顔のはじけた週末と打って変わり、バットを振るナインの目つきは緊張感にあふれていた。 練習後、主将の佐藤羅天(らま)は「全員の力で出塁し、得点につなげて日本一を目指す」と誓った。