「みんなと一緒に通わせたい」…知的障害がある子を普通学級にするか支援学級にするか判断するときにまず考えたいこと
知的障害や境界知能の子はついていけなくなる
なぜ学力のばらつきが許容されているのかというと、それによって進路の振り分けができるからという側面があります。学校の授業やテストの仕組みは、そのように組み立てられています。私たちはその実状を理解したうえで、子どもの進路を考えなければいけません。 いまの社会には、授業を理解できない子がいても仕方がないと見做すような実態があります。だから軽度の知的障害や境界知能、学習障害が見過ごされることがあるわけです。本来であれば、勉強が苦手で困っていれば小学校低学年くらいでみつかるはずの特性が、小学校を卒業しても気づかれないことがあります。 軽度知的障害の子は入学直後から、境界知能の子は小3くらいから、通常学級の授業を難しいと感じます。通常学級で学んでいる場合、低学年の頃は本人や親、先生の工夫でテストの点はとれる場合もありますが、学年が上がるにつれて成績も下がってくることが多いです。 知的障害があることがわかれば支援級に切り替えることもできますが、境界知能では法制度上、それも希望できません。その結果として学校生活に不全感を持ち、不登校になってしまう子も出ているのです。 写真/shutterstock
---------- 本田秀夫(ほんだ ひでお) 信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。長野県発達障がい情報・支援センターセンター長。特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。 精神科医。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、1991年から横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授。2023年より長野県発達障がい情報・支援センターセンター長。発達障害に関する学術論文多数。日本自閉症スペクトラム学会会長、日本児童青年精神医学会理事、日本自閉症協会理事。 著書に『自閉症スペクトラム』『発達障害生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』『子どもの発達障害』『学校の中の発達障害』(以上、SB新書)などがある。 ----------
本田秀夫