元賞金女王「古閑美保」が語る“引退を決意した日”と“ゴルフから離れたかった2年間”
ゴルフの実力もさることながら、バラエティー番組でも歯に衣(きぬ)着せぬ物言いでお茶の間の人気者となったプロゴルファーの古閑美保さん(41)。現役を退いた今は、講演会やトークショー、YouTubeなどでゴルフの魅力を発信している。しかし、引退直後はゴルフを拒絶していた時期もあったという。プロゴルファーをやめてからの日々を聞いた。 【写真】14歳ごろ「美少女ゴルファー」だった頃の古閑さん * * * 「引退してから2年くらいは、普通の生活ができませんでしたね」 聞きなじみのあるハスキーな声で、古閑さんは言う。 「朝も遅い時間まで寝ていられなかったですし、家でのんびりするとか、ゴロゴロするとかもできなかったんです」 幼いころから競技スポーツの世界で生きてきた古閑さんは、プロゴルフという“戦場”から退いたあと、「日々の過ごし方がわからなかった」のだという。 「古閑家は『プロ志向』が強くて、10歳でゴルフを始めたころから、トッププロを目指して、日々なにかとずっと勝負してきたんです。気を張っていることが日常で、自分がプレッシャーを受け続けてきたということに、引退してからやっと気づくほどでした。現役時代は1日20時間ぐらいゴルフをやっている感覚で、練習だけじゃなくて、やっぱり体づくりも大事ですし、食事とかの時間も全部ゴルフに費やしていたので、『24時間じゃ足りない!』って思っていました。けど、引退した瞬間、私から何もなくなって、そうすると逆に24時間が長すぎて長すぎて……」
■ゴルフ関連の仕事はすべて断っていた 古閑さんは、この24時間を“埋める”べく、趣味を持とうといろいろ試したのだという。 「ボウリング、卓球、ビリヤード、テニス、キックボクシング、ベリーダンス、それに社交ダンスとかペン字もやりました。それから、楽器もやりましたね。三味線やったり、ギターやったり。温泉とかに旅行も行って楽しかったんですけど、一方で『私、これ何のためにやってるんだろう』って目的がないことに我慢できなくて」 そんな古閑さんを救ったのは、やはりゴルフだった。実は引退してからゴルフをすることを極端に避けていたのだという。その理由にも、古閑さんの強い「プロ意識」がにじむ。 「プロゴルファーたるもの、試合で稼ぐものっていう気持ちが強くて。なので、引退してプライベートでゴルフをやっている自分のことなんて到底想像できなかったんです。プロアマ(プロとアマチュアが一緒にラウンドを回る形式)に出るとか、ゴルフを続ける方法はありましたけど、そういった試合に出るのに抵抗感があったんです。やっぱりトーナメントで技術を競って、そこで勝ち取った賞金の額が自分の価値だっていう考えが強かったので」 引退してからゴルフ関連の仕事の依頼も多くきたというが、全て断っていたそうだ。 しかし、2年ほどすると意識が変化し始めた。きっかけは、年に1、2回行われるスポンサーとのゴルフだったという。 「引退して1年目はまだ良かったんですけど、2年目にすっごく下手になってたんです。小さいころからずっとうまかったので、そんな経験したことなくて。プロの世界でも賞金女王を取っているから、周りの人たちもそういう目で見てくるわけですよ。でも実際はすごく下手で、そのことが本当に恥ずかしかったんです」