景気と“ラウドミュージック”の関係性【坂口孝則連載】『オリコンエンタメビズ』
日々話題を集めるエンタメニュースも、経済目線で知ればもっと面白くなる。そこで『ORICON NEWS』は、エンタメをこよなく愛する経営コンサルタント・坂口孝則氏に、エンタメにまつわるニュースを経済視点で解説してもらう企画『オリコンエンタメビズ』を連載中。今回は、ラウドミュージックが求められる理由を経済目線で解説してもらった。 【写真】あどけなすぎる! 2012年のBABYMETALローティーン時代 ■現代日本ポップスの源流とラウドミュージックの歴史 現代にYOASOBIやOfficial髭男dismが存在しなかったとしたら、日本の音楽シーンは大きな損失です。そして、さらにLUNA SEA、L'Arc~en~Ciel、DIR EN GREY、lynch.さらにBABYMETALも存在しなかったとしたら……。もはや日本の楽しみの大部分の欠落と同義です。 ところで昨年11月、YOASOBIは「NEX_FEST」に出演して日本全体に衝撃を与えました。というのも、日本を代表するポップスと思われていたYOASOBIが、なんとラウドミュージックのBring Me the Horizon、BABYMETAL、マキシム ザ ホルモンと共演したからです。ラウドミュージックとは、ヘビーメタル、ポストロック、さまざまな言い方があります。つまりうるさい音楽です。しかもYOAOBIとの相性は最高でした(メインのBring Me the Horizonはかつてデスメタルバンドでした)。 しかも昨年開催の「KNOTFEST JAPAN」など、このところ日本でラウドミュージックのフェスが定着し、人気を集めています。BABYMETALは今年5月に、さいたまスーパーアリーナで主催フェス「FOX_FEST」を開催。Crossfaithも来年2月に幕張メッセでフェスを主催することが話題です。 では、なぜ昨今、日本でラウドミュージックが人気を集めているのか。これを経済・時代背景を分析するとともに、実は現在日本のポップスシーンを牽引しているアーティストらが、ラウドミュージックの系譜にあることを説明します。 ここで話を変えるようですが、現在、日本の景気は足踏みをしています。日経平均は最高値を更新しました。しかし、実質給与は上昇していません。そんなとき、ラウドミュージックが人気になるのは時代の再来ともいえます。 というのが、当稿の中盤で説明する、現在のアーティストに影響を与えたラウドミュージックのバンドを紹介するのですが、その多くは結成が1985年前後です。1985年はプラザ合意の年であり、日本がバブル経済に突き進んでいく前段階でした。そこでヘビーメタルなどの音楽が注目されました。 完全にバブル経済で浮かれていたとき。象徴的なのは1989年から1990年に放映された『三宅裕司のいかすバンド天国』(TBS系)で、ポップスが前に立ち始めました。ラウドミュージック=ヘビーメタルは、中産階級の逆襲の音楽ですから、豊かな時代になると、華やかで明るい音楽が享受されるのは必然でした。よってラウドミュージックやヘビーメタルは隠れるようになりました。 しかし、日本経済としては残念なことですが、その後「失われた30年」といわれる時代においては、むしろラウドミュージックとその影響下にあるバンドが注目されました。その流れはLUNA SEA、L'Arc~en~Ciel、DIR EN GREY、lynch.から、YOASOBIやOfficial髭男dismにいたりました。 なお英国でパンクが生まれたのは1979年で不況の時代。また米国でヘビーメタルが全盛期を迎えたのも1980年代前半で、米国が不景気で失業者が続出する時代でした。日本、英国、米国とも、経済状況と生じる音楽は密接な関係があります。 ラウドミュージックとは、肉体の解放と、虐げられたものの叫びといえます。景気が盛り上がり、幸福な時代であれば楽曲やエンタメも嘆く必要はありません。しかし景気が底であれば、理想としてのアイドルや、やるせない気持ちの解消としてラウドミュージックが需要されるのは、きわめて経済・時代的な話です。
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