「彼方からのうた」上演に向け、サイモン・スティーヴンスと桐山知也が対談
8月2日に東京・吉祥寺シアターで開幕する、サイモン・スティーヴンス、マーク・アイツェル作「彼方からのうた -SONG FROM FAR AWAY-」に向けて、スティーヴンスと演出の桐山知也による座談会が行われた。 【画像】サイモン・スティーヴンス(c)Kevin Cummins(他7件) 「彼方からのうた -SONG FROM FAR AWAY-」は、2015年にイヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出で初演された作品。これまでの各国における上演では、一人芝居として上演されてきたが、日本初演となる今回は、四人芝居として上演される。舞台は冬のニューヨーク。アムステルダムに住む母親から「弟のパウリが死んだ」と電話がかかってきたウィレムは……。 桐山がスティーヴンス作品の魅力について「『SONG FROM FAR AWAY』もそうですが、サイモンさんの戯曲から、美しくもあり悲惨でもあった過去への興味と言いますか、そういう過去とどう向き合うのか、あるいは、過去に向き合わないという事態がなぜ起きているのか、ということについて考えさせられることが多いように思います」と話すと、スティーヴンスは「僕は戯曲を書くうえで、そういうことを具体的に説明したり、何か指し示したりといったことはないけれども、自分たちの過去に理由や理屈を見つけながらも、美しい過去を大切にしたいという姿勢が表れているのかもしれません。それに英国も日本も、巨大な力を誇示し繁栄した過去がありますよね。それを振り返った時の悲哀や哀愁といったものを、どう理解して納得しようとしているか、ということも僕の戯曲の中に表れているのかもしれないな、と思います」と答える。それを受けて、翻訳を担う高田曜子も「国として自分たちの過去・歴史について、美しい部分も醜い部分も振り返る/振り返らないという大きな視点のみならず、やはり人間一人ひとり、個人としても振り返るのかどうか、ということがリンクするように思います」と同意した。 さらにスティーヴンスが英国と日本のもう一つ大きな共通点として「どちらの国も資本主義に支配されているということ」と指摘し、「『FORTUNE』、『Birdland』(2014年初演 / 2021年、高田の翻訳でパルコ・プロデュースにて上演)、『ポルノグラフィ』、『レイジ』、そして『SONG FROM FAR AWAY』と、それぞれ戯曲の形式やトーンは違うけれど、いずれも人間らしさと経済の関係について問い掛けています。英国・ロンドンにとって、とても重要な問いだと思って僕は書いているのだけれど、それは東京にも共通して言えることなんじゃないかな」と話すと、桐山は「サイモンさんが先ほど言っていた社会的背景や歴史はもちろんのこと、資本主義についての共通点は僕も感じています」とうなずいた。 「彼方からのうた -SONG FROM FAR AWAY-」の公演は8月2日から13日まで東京・吉祥寺シアターで行われ、出演者には宮崎秋人、溝口琢矢、伊達暁、大石継太が名を連ねている。 ■ 彼方からのうた -SONG FROM FAR AWAY- 2024年8月2日(金)~2024年8月13日(火) 東京都 吉祥寺シアター □ スタッフ 作:サイモン・スティーヴンス / マーク・アイツェル 翻訳:高田曜子 演出:桐山知也 □ 出演 宮崎秋人 / 溝口琢矢 / 伊達暁 / 大石継太 ※高田曜子の「高」ははしご高が正式表記。