【米大統領選2024】 どういう仕組みなのか簡単に説明
世界中が注目するなか、アメリカの有権者が次の大統領を選ぶ、大統領選挙が迫っている。 有権者は大統領のほか、連邦議会の議員も選ぶ。連邦議員は法律の成立に大きな役割を果たすだけに、有権者は自分の生活に大きく影響する人たちを選ぶことになる。 ■アメリカ大統領選はいつ? 今年の選挙は11月5日に行われる。勝利した候補は来年1月20日に就任し、4年間の任期を務める。 大統領はほとんどの場合、政策の実施につながる法律を成立させるため、連邦議会と協力しなくてはならない。 国際社会では、アメリカを代表して大統領はかなり自由に行動し、独自の外交政策を展開できる。 ■候補者は? どうやって指名された? 共和党と民主党の二大政党は、州ごとに「予備選」や「党員集会」と呼ばれるものを開き、だれを11月の本選の党候補にしたいか、それぞれの党の支持者が選ぶ。 共和党では、ドナルド・トランプ前大統領が他の候補たちに圧勝し、党の支持を得た。今年7月にウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれた全国大会では、各州の党代表が一堂に集まり、正式にトランプ前大統領を共和党の大統領候補に指名した。これに先駆けトランプ候補は、共にホワイトハウスを目指す副大統領候補として、J・D・ヴァンス上院議員(オハイオ州選出)を選んだ。 民主党では、カマラ・ハリス副大統領が出馬することになったのは、ジョー・バイデン大統領が7月に撤退を決め、党内でほかに出馬しようという人が出なかったからだ。ハリス氏は副大統領候補に、ミネソタ州のティム・ウォルズ州知事を選んだ。 独立候補として大統領を目指す人も何人かいる。 特に有名だったのは、故ジョン・F・ケネディ元大統領のおい、ロバート・F・ケネディ・ジュニアだが、ケネディ氏は8月末に撤退し、トランプ候補を支持するようになった。 ■民主党と共和党の違いは 民主党はリベラルな政党で、公民権を重視する。国民のためのセーフティネット(安全網)を社会に幅広く整備することを目指するほか、気候変動対策を推進する。 共和党は保守的な政党で、低い税金や小さい政府を重視する。憲法修正第2条が保障する「武器保有権」をもとに市民が銃を持つ権利を推進し、移民や妊娠の人工中絶を厳しく規制しようとする。 共和党は「Grand Old Party(偉大な伝統ある政党)」を自称し、その略称「GOP」とも呼ばれる。 ■勝敗はどうやって決まるのか 全国的に一番たくさんの票を得た候補が勝つわけではない。その代わり、50州とコロンビア特別区(首都ワシントンの意味)でそれぞれ、有権者の支持を得る必要がある。 50州とコロンビア特別区はそれぞれ、人口に応じて「選挙人」が割り振られている(以下、「州」にコロンビア特別区を含めて説明する)。 選挙人は合計538人おり、そのうち270人の支持を得た候補が当選する。選挙人は自由に候補者を支持するのではなく、州の有権者の投票結果に従うことが原則となっている。 ほとんどすべての州では、票の過半数を獲得した候補が、その州に割り当てられた選挙人全員の支持を、自分のものにする。つまり、こうして選挙人を270人以上集めた候補者が、当選する仕組みだ。 例外はメイン州とネブラスカ州で、この2州だけは、過半数を得た候補が選挙人全員を総取りするのではなく、得票率に応じて選挙人を候補に配分する。 2016年のヒラリー・クリントン候補(民主党)のように、全国的な得票数は勝っていても、獲得した選挙人の人数で負けることもあり得る。 ほとんどの州は歴史的に、大多数の有権者がどの党を支持するかあらかじめ決まっている。そのため候補たちはそれ以外の、両党の間で「swing state(揺れる州)」、いわゆる接戦州や激戦州と呼ばれる一握りの州に選挙活動を集中させる。 今年は、ペンシルヴェニア(選挙人19人)、ノースカロライナ(同16人)、ジョージア(同16人)、ミシガン(同15人)、アリゾナ(同11人)、ウィスコンシン(同10人)、ネヴァダ(同6人)の7州が、どちらの候補を支持するか不透明な激戦州とされている。 ■大統領選には誰が投票できるのか アメリカ国民で18歳以上なら、大統領選で投票する資格がある。 ノースダコタ州を除くすべての州は、事前に有権者として登録することを投票の条件にしている。 有権者登録のための手続きと締め切りは、州によって異なる。 外国に暮らすアメリカ国民は、必要な事前手続きをしたうえで、郵便で在外投票することができる。 期日前投票がいつから可能になるかは、州ごとに違う。 ■大統領のほかに選ばれるのは 一番注目されるのは、誰が大統領になるのかだ。しかし有権者は投票所で、大統領だけでなく、連邦議会の議員も選ぶ。 連邦議会の上院(定数100)の議員の任期は6年で、議員の3分の1が2年ごとに改選される。そのため今回の改選対象は34人。 下院(定数435)の議員任期は2年で、今回も435人全員が改選対象となる。 予算案を提出する下院は現在、共和党が多数を占める。 上院は、政府の閣僚や最高裁判事などの要職について、大統領に指名された人を承認する権限をもつ。こちらは現在、民主党が多数を占める。 連邦議会の上下両院は法案を審議し、可決あるいは否決する。これを通じて議会は、大統領に対するチェック機能を持つ。大統領の政策や方針を支持しない場合は、議会は大統領の行動を抑制することができる。 ■結果はいつ分かる? 通常は投票日当日の深夜か翌日未明までには、勝者が判明することが多い。ただし、2020年にはバイデン氏の当選が確実になるまで約4日かかった。全米で大勢が判明するまでに、さらに6日ほどかかった。 今回のように現職が出馬していない場合、当選者が判明してから就任するまでの期間は「移行期間」と呼ばれる。 この間に次期大統領は組閣作業を進め、新政権発足へ向けて準備を重ねる。 就任式は来年1月20日、首都ワシントンで行われる。連邦議会の前の階段で、新しい大統領と副大統領がそれぞれ、「合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、全力を尽して合衆国憲法を維持、保護、擁護することを厳粛に誓う(あるいは確約する)」と宣誓して就任する。 (英語記事 US election 2024: A really simple guide to the presidential vote)
(c) BBC News