自民党の関心事はすでに総裁選「号砲が鳴ったかのようだ」 菅氏と麻生氏の「キングメーカー」争いも勃発
「もう号砲が鳴ったような雰囲気だ。連日のように『一杯飲もう』と飲み会の日程でいっぱいだよ」 と、自民党の中堅クラスの衆院議員がスマホの予定表を見せながら苦笑する。確かにほぼ毎日、総裁選関連と思われる飲み会の予定があり、一晩に2つの飲み会の日もあった。 【写真】総裁選に先走る動きに苦言を呈したのはこの人 まだ東京都知事選の真っ只中だが、自民党の関心事は9月の総裁選。岸田文雄首相が、まだ自身の進退を明確にはしていない中、ポスト岸田を狙う動きが次々と噴出している。 ■幹事長が「総理大臣」発言 6月30日朝、テレビの報道番組に出演し、 「総理大臣になってやりたい仕事があるのは間違いない」 と語ったのは茂木敏充幹事長。 茂木派のトップでもあった茂木氏は、麻生太郎副総裁ともに、岸田政権を支えてきた。だが、早くも岸田氏の「次」への出馬表明にも思える「総理大臣」発言。 茂木派の国会議員がこう話す。 「総裁選に色気を見せる人の動きが活発になってきたので、我慢できなくなったのでしょう。飲んでいる時も『総理になれば』とか時々大演説しています。ついテレビでも出てしまったのかな」 ■菅前首相と会食重ねる石破氏 茂木幹事長を焦らせている一つの要因は、元幹事長の石破茂氏の動向だ。世論調査で「次期総理候補」として常に上位にランクされ、国民的人気は高い。 石破氏は7月1日に都内のホテルで菅義偉前首相、武田良太元総務相(二階派)と会食した。無派閥の石破氏は、非主流派に甘んじている同じ無派閥の菅氏や二階派との連携を模索して会食を重ねているようだ。これらの会食が報じられている背景について、自民党を取材する記者がこんな話をする。 「石破氏の会食情報が石破氏周辺から出て、そこに駆け付けると、菅氏も来るというパターンです。石破氏がPRしたいのでしょう。総裁選への意欲の表れでは」
今は無派閥の石破氏だが、かつては石破派の20人の議員を束ねる領袖だった。だが、総裁選で敗北を重ね、非主流派に置かれ続けて退会者が相次ぎ、21年12月に派閥を解消した。 しかし、休眠していた勉強会を今年2月に再開するなど活発に動き始めている。石破派だった国会議員が、こう話す。 「やる気満々だ。近く著書も出版するようで、そこに政権構想もしっかり書き込んでいるらしい。菅氏と食事だというだけで、えらい数のメディアが集まってびっくりしているようだが、こんな注目されるのは久しぶりで嬉しそうだ。今は、総裁選への出馬表明の時期をうかがっている」 ■都議補選の応援に回る高市氏 高市早苗・経済安全保障担当相も、再び総裁選に、と伝えられる。前回21年の総裁選で、全体では3位で決戦投票に進めなかったものの、国会議員票では岸田氏に次ぐ2位につけた。今年6月29日の非公開の会合で、総裁選に「出馬する」と明言したと報じられた。 高市氏のSNSを見ると、都知事選と並行して行われている東京都議補選で自民党候補の応援にあちこち入っている様子がわかる。露出を多くして、前回弱かった党員票を掘り起こそうという狙いのようだ。 前回、無派閥の高市氏は安倍晋三元首相のバックアップを受け、安倍派(当時は細田派)を中心に推薦人を集めた。だが、今は肝心の安倍派は解散。安倍派5人衆と呼ばれた幹部全員が処分を受け、総裁選には動けない状態だ。 安倍派の衆院議員は、 「前回、高市氏が3位に食い込んだ評価はとても高い」 と言いながら、次の総裁選については、複雑な心境を話す。 「安倍派では、今回も高市氏を推したいという声と、『前回は安倍さんから言われただけで』と消極的な声の両方が入り混じっている。高市氏が嫌な人は、福田達夫・元総務会長を担ごうとするんじゃないか。最大派閥だったのに、直近2回の総裁選では自派から候補を出していないから、『誰か出さないと本当に安倍派はバラバラになる』という議員はかなりいます」