箱根駅伝Stories/不動の絶対王者・駒大 最強4年生世代が牽引「チームに何ができるかを常に考えている」
新監督にして適材適所が光る藤田采配
駒大の強さを表す言葉は尽きないが、「4年生」ともう1つ何かをあげるなら、藤田敦史新監督の采配がある。 大八木弘明総監督から「現場主義」を継承。出雲、全日本を制して早くも「優勝監督」に名を刻んだが、藤田監督自身はは「まだまだ新米監督です。大八木総監督が長年かけて作り上げたものを引き継ぎ、いじるところは何もありませんでした」と低姿勢だ。 2015年度から8年のコーチ時代は裏方に徹してきた新監督らしい一面だが、出雲、全日本でほぼ完璧なオーダーを完成させ、リザーブ選手全員も走れる状態に持っていった手腕は、「継承」だけで説明できるものではない。 出雲、全日本は誰が見ても「オーソドックス」な編成。裏を返せば、奇をてらった配置をする必要もない戦力を整えた。その中でにじませた藤田カラーが、全日本での1区赤津の起用だ。 1年前に8区区間賞を取った花尾が出走できる状態に戻っていたが、花尾に無理をさせないことと、赤津の練習が充実していた点などを考慮。大八木総監督が「赤津を1区にし、花尾を外す決断については、私に相談するのではなく、すでに藤田監督が決断していました」とその裏側を明かす。 そして見事に赤津が区間賞を獲得。全区間トップ中継の完勝につながった。 箱根駅伝へ向けて16人のエントリー選手を絞る際には、「復調待ち」の経験者より、現時点で充実している選手を入れた。シビアな選択に向き合っている。 「(リザーブを含め)誰が走ってもおかしくない」(藤田監督)という状態を出雲、全日本で作り、なおかつ復調した経験者、新たに成長を示した新鋭を組み入れた、箱根エントリーの16人。今まさに誰が走ってもおかしくない。 1区が誰なのか。2区はだれなのか。2種目のU20日本記録保持者にして箱根初登場の佐藤はどこに入るのか。「どこでも走れる」篠原はやはり当日変更に備えるのか。5、6区の特殊区間は、前回から変わるのかどうか。 変幻自在。どんな先入観も覆してきそうな采配が見られるかもしれない。
奥村 崇/月刊陸上競技