21年連続増加「海外永住者57万」の日本に未来ナシ? それでもあえて「国外脱出」をススメる理由
日本に別れを告げる人が増え続けている。外務省の海外在留邦人数調査統計によれば、最新版(2023年10月)の数字で海外永住者は57万4727人。実に21年連続の増加だ。 【図表】アジア諸国の人生に対する考え方や価値観に関する意見 統計は男女別でも取得されており、23年の永住者は、男性21万6397人、女性35万8330人で約62%を女性が占める。 流出先は米国が22万8178人で最多。以下、オーストラリア6万3055人、イギリス2万8952人と続く。アジアでは韓国の1万6236人を筆頭に台湾6976人、中国5366人、フィリピン5071人、シンガポール4563人となっている。
57万人が日本を脱出する”インパクト”
同データは「在留届」をベースにしており、それぞれの年齢・属性までは把握できない。そのうえで、法政大学経営学部教授の平田英明氏は、”57万人流出”のインパクトを解説する。 「57万人は日本の総人口の0.5%に相当しますから、無視できない水準です。統計からはわかりませんが、仮に労働力人口に相当する人たちが抜けているのであれば、国としての供給能力を押し下げることに。需要面でも同様に押し下げ要因になりえます。また、それが子育て世代であるならば、少子化傾向を強める可能性もあるでしょう」。
アジア5か国に調査で顕著だった日本の若者の母国への悲観
増え続ける海外永住組。その背景にあるのはやはり、日本の魅力の乏しさということなのか…。それを知るヒントにつながりそうな調査結果がある。Kadence International (Thailand) Co. Ltd. が実施した「アジア5か国における消費実態・生活意識調査(2023年)」(2023年10月12~17日)だ。 対象国は日本、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンの5か国で、各国の18~29歳の男女200人が対象となっている。 調査結果から透けて見えるのは、日本の若者の母国への悲観だ。ほとんどの調査で、他のアジア4か国に比べ、日本は著しく低調な結果となっている。 例えば、「将来のキャリアアップに向けて自己研鑽している」という質問には、インドネシアの84%を筆頭に日本以外の国は平均で7割以上が「そう思う」と回答。一方、日本で「そう思う」と回答したのはわずか14%。「経済的に豊かになれるようキャリアアップしたい」に対し、「そう思う」と答えたのはアジア4か国が平均で85%以上だったのに対し、日本は23%にとどまった。 勢いと意欲にあふれるアジア諸国の中で、日本がいかに勢いを失いつつあるか。それが如実に分かるさみしい結果といえるだろう。この数字を額面通りに解釈するなら、日本の若者はその衰退と心中するということになる。 一方で、若者が日本に見切りをつけ、活路を外へ見出す動きが活発になるなら…。日本の生産人口減少は加速し、労働力が空洞化。少子化も加速し、日本の生産性がさらに低下するという最悪のシナリオも透けてくる…。