富山ワイン、虫害で減産 「純南砺産」切り替え直後 醸造量、計画の半分に
「富山ワイン」を製造販売するトレボーが南砺市立野原西で運営するブドウ園で、葉や実を食べるガの一種「ハスモンヨトウ」の幼虫が猛威を振るい、今季のワイン醸造量が計画の半分に落ち込む見通しであることが23日、分かった。社員が手作業で傷付いた実を取り除くなど作業に追われた。今年はワイン用のブドウを全て純南砺産に切り替えたばかりで、社員は試練を越えてワイナリーを成長させる思いを新たにしている。 【写真】ハスモンヨトウの幼虫(県農林水産総合技術センター提供) トレボーによると、収穫を始めた8月下旬まではハスモンヨトウの影響はなく、順調にブドウが育っていた。自社栽培の木の成長に伴い、今季の収穫量は昨季実績の33トンを上回る45トンに伸びると見込んでいた。 しかし、8月末からハスモンヨトウの幼虫が急激に増え始めた。社員はワインの品質に影響が出ないよう、傷のない実を丁寧に選んで集めたり、駆除などの作業を行ってきた。 今季の収穫量は当初計画の半分を下回る約20トンとなり、ワイン生産量の見直しも余儀なくされた。収穫量が少なかった昨年までは長野や山梨からブドウを仕入れていたが、今年から自社産のみでの醸造に切り替えたこともあり、ブドウの不作が醸造量減少に直結した。 県農林水産総合技術センターによると、ハスモンヨトウの幼虫は野菜や果樹などに食害を及ぼす。昨年、県内で野菜などに被害があり、今年9月に大豆の食害に注意を促していた。23日時点で、県内全域の被害は平年よりやや多いが、トレボー以外に大規模な被害は報告されていないという。 全国ではハスモンヨトウの大規模な食害が起きるケースもあり、台風時に中国から九州などに飛来するとの見方もある。県内では8月下旬に台風10号が接近していた。 センターの齊藤毅県農業研究所病理昆虫課長はトレボーでの被害拡大について「幼虫が成長する条件がそろうと局地的に急増する。風で成虫が飛来した可能性も考えられる」との見方を示した。発生した場合、農薬などで防除して被害拡大を防げるケースもある。 トレボーは富山ワインの産地化を目指し、14種類のブドウを栽培し、木のオーナーが約800人を数えるなど支援者も多い。担当者は「純南砺産ワインの生産本数は半減するが、昨年以前に仕込んだワインも出荷できる。品質にこだわったワインを味わってほしい」と語った。 ★ハスモンヨトウ 「暖地系」の害虫で富山県内では越冬せず、県外から飛来する成虫が産卵、幼虫が食害を発生させる。国内の越冬地は関東以南の太平洋側で、6~9月に年4回程度、被害のピークがある。 ●香り楽しめる白 新酒瓶詰め トレボーは23日、今シーズンの新酒「プリムール」の瓶詰め作業を始めた。赤ワイン用のブドウ「ピノノワール」の皮と種を取り除いて仕込んだ白ワインで、華やかな香りやフルーティーな酸味を楽しめる。 「立野原ブランドノワール2024」として11月2日から店頭に並ぶ。同日のワイナリーショップ4周年祭で提供し、県内外の酒販店で販売される。