学校や公園の「D51」ピンチ? 保存が課題に 全国では荒廃例も
全国の学校や公園などに保存されているSL(蒸気機関車)の多くがさびや腐食などで荒廃の危機にあるほか、展示施設の改廃などで厄介もの扱いになるおそれも生じています。D51を展示保存してきた長野市の後町(ごちょう)小学校は、児童数減少による閉校が決まりSLの行方が心配されましたが、関係者の配慮で解体は免れそう。しかし、ほかでは事情により保存が困難になるケースも出てきそうです。
長野市教委「解体はしない方向」
長野市の中心市街地にある後町小学校は児童数の減少で2013年に閉校。児童たちの理科教育用に1973年に旧国鉄から貸与された「D51 549」1台の保存の行方に市民の関心が集まっています。後町小学校同窓会の高橋正樹会長は「このD51は旧国鉄の長野工場で造られた9台のうちの1台で、長野とは深い縁があります」と話しています。 これに対し長野市教育委員会は「解体はしない方向で検討しています。具体的なことについては未定ですが」と、基本的に保存の方向を示しています。市民からの問い合わせもあり、慎重に判断する方針です。ただ、小学校の跡地は今後、長野県の学校関係の施設になる見通しで、市と県の管理関係の在りかたによってはD51の保存がどうなるのか心配する市民もいます。
さび防止など保存管理には手間
SLブームやSLの保存展示は蒸気機関車が廃止される1970年代にかけて全国的に広がり、鉄道ファンや鉄道マニアの広がりに一役買ったとされています。後町小学校のD51もちょうどその時期に貸与されたものでした。SLの保存は金属の腐食対策など手間がかかり、長野市は「3年に1度は塗装するなど管理に配慮してきました」(市教委)と言います。しかし、全国には管理不十分な例も少なくないようです。 SLなどの保存状態をまとめたホームページ「全国保存車両データベース」を掲載している管理人の男性は、「D51の保存数は全国で180両弱、そのうち本線運用可能な動態保存がD51 498の1両、施設内のみの動態保存はD51 200の1両、圧縮空気で可動できるものがD51 561の1両です」と説明。しかし、「D51を含め多くの車両が資金難などにより手入れが行き届かない状態で、中には荒廃していて危険な状態のものもあります」としています。 SLの保存はさび防止や部品の盗難防止などに配慮するほか、施設によっては屋根をかけたり、屋内に展示するなど管理状態はさまざまです。外観は良くても内部は荒れていることも少なくないようです。長野市のように定期的に塗装をするなどの管理は良好な方だとされています。